1930年代~1970年代マッカランの香味と製法:詳細分析
1. マッカラン(1930–1970年代)における香味の特徴
1930年代から1970年代に蒸留・ボトリングされたマッカランにおいては、リッチで複雑な香味が備わっていることが特徴。
とりわけオロロソ・シェリー樽由来の濃厚なドライフルーツ(レーズンやイチジク)やスパイス(シナモン、クローブ)の香り、麦芽由来のナッツ様のコク、長期熟成によるオークの深みが調和し、「シングルモルトのロールスロイス」と称される優雅な風味を呈していた。
例えば熟成年数の長いビンテージではシェリー樽熟成によるチョコレートや革・タバコのニュアンスも現れ、経年変化で得られるランシオ香(古い木樽由来の甘い樹脂香)も感じられる。
一方で、一部の古いマッカランには赤い果実や花のような香りが言及されてきた。
特に「苺」を思わせるフルーティーな甘い香りや、「スミレ」の花を連想させる華やかな香りが現れることがある。
この苺様の香りは、総称してストロベリーエステルと呼ばれるエステル類の組み合わせによると考えられる。
実際にモルトウイスキーの主要な香気成分であるエステル類(例えば酢酸イソアミルや酢酸フェネチルなど)は果物のような甘い香りを与え、特に炭素数の比較的少ないエチルエステル(C6~C8)はリンゴやパイナップル、ベリーを想起させるフルーティーな香りをもたらす。
スミレ様の上品なフローラル香の要因は、β-イオノンという微量成分である。
β-イオノンは極めて低濃度であってもスミレの花の香りを呈し、マッカランを含む熟成モルト中から分析検出されている。
この化合物は麦芽中のカロテノイド由来で、製麦工程での発酵や蒸留中の熱によって生成するものである。
加えて、長期熟成に伴い生成するβ-ダマセノン(バラや熟したリンゴの甘い香気を持つ成分)は他のフルーティー香と相まって苺ジャムのようなニュアンスを増強する。
これらの微量成分がマッカランの華やかな香りの奥行きを支えていた。
総じて、1930–1970年代のマッカランはシェリー由来の濃厚さを基調にしつつ、麦芽と製法の伝統によるオイリーでコクのあるボディと、長期熟成で生まれるフルーティーかつフローラルな上立ち香を併せ持っていた。
その複雑さと品質の高さは、後年ウイスキー評論家マイケル・ジャクソンによって「シングルモルトのロールスロイス」と評されるほどであり、当時のスペイサイドモルトの中でも屈指の存在感を放っていた。
参考文献(Chapter 1)
- The Macallan 1980 – The End of an Era, Bottled. The Whiskey Wash (2023)
- Sources of Volatile Aromatic Congeners in Whiskey. Beverages, vol.9, no.3, 2023
マッカランの香味特性において、使用される大麦品種は重要な基盤となる。
1930年代から1960年代半ばまで、マッカランでは当時一般的であった伝統的な二条大麦品種が用いられていたと考えられる。
1960年代後半に画期的な新品種「ゴールデンプロミス (Golden Promise)」が導入されると、マッカランはこの品種を積極的に採用した。
ゴールデンプロミスは1968年にスコットランドの推奨品種リストに掲載され、1970年代にはスコットランドで作付けされる春播き大麦の70%を占めるほど普及した。
マッカラン蒸留所はウイスキー用大麦としてこの品種を独占的に使用する契約を結び、1980年代初頭まで主原料としていた。
ゴールデンプロミスは従来品種に比べ収量は低いが、「より豊かな風味」をもたらすと感じられていたためである。
実際、1990年代により高収量な新品種へ移行した後も、クラフト蒸留所や醸造家の間でゴールデンプロミスの風味の良さが再評価され、少量ながら作付けが維持された。
▼ 図1:大麦品種の収量と風味ポテンシャル比較
(Golden Promiseは収量70%、風味ポテンシャル9/10、近代品種は収量高いが風味弱い)
Golden Promiseの導入によって、マッカランのニューメイクスピリットにはリッチな厚みとフルーティなトップノートがもたらされた。
フロアモルティングによる伝統的製麦法が、麦芽由来の前駆体を豊かにし、後の熟成香(スミレ香、苺様香)を支えることになった。
また、第二次世界大戦前後の石炭不足の影響で一部ピートを用いたこともあり、1946年ヴィンテージにはほのかなスモーク香が残る特異な例も存在する。
▼ 表1:原料大麦品種の比較
時代 | 主な品種 | 収量 | 風味特性 | 香味への寄与 |
1930–1950年代 | Plumage Archer / Proctor | 中 | モルティ・ナッティ | β-イオノン前駆体が豊富 |
1960年代前半 | 在来種(Golden Promise導入前) | 中 | 軽快・穀物感 | エステル生成バランス良好 |
1960年代後半 | Golden Promise導入期 | 低〜中 | シルキー・リッチ | エステル+高級アルコール生成 |
1970年代 | Golden Promise主体 | 低 | 厚み・甘味増強 | オイリーさと甘味の向上 |
このように、1930~1970年代のマッカランは、原料選択と製麦技術の両面で極めて高い風味形成力を持っていた。
それが後年のマッカラン黄金期を支えた要素のひとつであった。
参考文献(Chapter 2)
- The Macallan Effect: How One Distillery Redefined Single Malt Scotch.
- Golden Promise – Wikipedia
発酵(ウォッシュバック内での醪〈もろみ〉発酵)は、マッカランの香味成分を生み出す重要な工程である。
マッカラン蒸留所では伝統的に木製の発酵槽(オレゴンパイン製)を用い、醪の温度管理をしながらゆっくりと発酵を行っていた。
使用する酵母は蒸留用Saccharomyces cerevisiae株であり、
発酵時間は通常より長い50〜60時間を基本とすることで、
エステル類(果実様香)、高級アルコール類(ボディ感)、有機酸(乳酸など)を豊富に生成した。
▼ 表2:発酵・蒸留工程の変遷まとめ
時代 | 発酵槽 | 発酵時間 | 蒸留器構成 | 加熱方式 | スピリットカット | 風味効果 |
~1954年 | 木製 | 50–60時間 | 小型直火釜×2 | 石炭直火 | 75–65% | 極めてヘビー |
1955–1964年 | 木製 | 約55時間 | 小型直火釜×6 | 石炭→ガス直火 | 75–65% | フルーティー感の増強 |
1965–1970年代 | 木製 | 50–60時間 | 小型直火釜×12 | ガス直火 | 75–65% | リッチかつクリーンな酒質 |
発酵後のもろみ(アルコール7-8%)は、
「Curiously Small Stills」(奇妙なほど小さな蒸留器)と呼ばれる
容量約3,900L、高さ約3.7mの寸胴型銅製ポットスチルで2回蒸留された。
小型直火蒸留器とヘビーリッチスタイル
- 小型直火:銅接触面が小さく、重質フレーバー成分(ワックス、スパイス様)を適度に保持
- 高温ゆっくり蒸留:エステルや高級アルコールをしっかり含んだスピリットを得る
- ファイネストカット:採取範囲わずか16%。エステル類を集中させ、重質脂肪酸を除去
また、1970年代までは石炭→ガス直火焚きによる加熱が続いていた。
直火蒸留では局所高温による**メイラード反応(ナッティ・ビスケット様)**も促進され、マッカランらしい厚みある味わいを支えた。
このような発酵・蒸留技術の組み合わせによって、
**「クリーンかつヘビー、リッチな酒質」**というマッカラン独自のニューメイクスタイルが形成された。
参考文献(Chapter 3)
- The Macallan 1980 – The End of an Era, Bottled.
- Sources of Volatile Aromatic Congeners in Whiskey.
マッカランの芳醇な香りと味わいを語る上で、シェリー樽熟成は欠かせない要素である。
1930年代から1970年代にかけて、マッカランは**スペイン・ヘレス産オロロソ・シェリー酒熟成の欧州産オーク樽(Quercus robur)**のみを用いて熟成を行っていた。
▼ 表3:シェリー樽の変遷まとめ
時代 | 樽調達方式 | オーク種 | 主要抽出成分 | 香味効果 |
1930–1950年代 | 輸送用古樽 | 欧州オーク | タンニン・バニリン | 濃厚なドライフルーツ感 |
1960年代 | 輸送古樽+特注シーズニング試験 | 欧州オーク | +β-ダマセノン前駆体 | フルーティ&フローラル強化 |
1970年代 | 特注シーズンド樽体制移行 | 欧州オーク | +ランシオ成分 | 滑らかで芳醇な樹脂香、丸みある味わい |
▼ 図2:オーク材種類による成分比較
- 欧州オーク(スペイン産):
タンニン・エウゲノール(クローブ様スパイス)が豊富。濃い色合いと渋み・スパイスを与える。 - 米国オーク:
β-メチル-γ-オクタラクトン(ウイスキーラクトン)が多く、ココナッツやバニラ様香気を強める。
マッカランは欧州オーク中心だったため、
「ドライフルーツケーキ+クローブ様スパイス」という深みあるシェリー香が色濃く表現されていた。
さらに、1970年代末以降はスペイン産シェリー業界のボトリング地変更により、
「輸送古樽」入手が難しくなったため、
シーズニング(意図的にシェリーを詰めた特注樽)プログラムへ完全移行した。
このため、1970年代前半までのマッカラン原酒は、
輸送古樽由来の極めて濃密なシェリー感とランシオ香を色濃くまとっていることが特徴である。
参考文献(Chapter 4)
- The Macallan 1980 – The End of an Era, Bottled.
- The Macallan Effect.
上述したような原料・製法・熟成によって形成されたマッカランの香味は、
さまざまな化学成分の相互作用によるものである。
ここでは、主要な香味寄与成分とその特徴、および生成要因を整理する。
▼ 表4:主要香味成分とその由来
成分クラス | 代表化合物 | 主なアロマ | 生成・由来 |
エステル類 | エチルヘキサノエート、酢酸イソアミル | 苺、青リンゴ | 発酵→蒸留前半カット |
高級アルコール類 | イソアミルアルコール、フェネチルアルコール | バナナ、ハチミツ、厚み | 発酵後期~蒸留 |
フェノール類 | エウゲノール、バニリン | クローブ、バニラ | 樽材リグニン由来 |
テルペン・ノリソプノイド | β-イオノン、β-ダマセノン | スミレ、熟果、蜂蜜 | 麦芽カロテノイド→熟成酸化 |
硫黄化合物 | DMS、DMDS(痕量) | 火薬香(痕量)、ナッツ補強 | 発酵副産物+銅除去+樽燻蒸由来 |
特に重要な香味要素
- 苺様香:エチルヘキサノエート+酢酸イソアミル+β-ダマセノンの複合効果
- スミレ様香:β-イオノン(超低閾値物質)
- 熟成甘熟感:β-ダマセノンの増加による
- 厚みとコク:高級アルコール+適量脂肪酸残存による
マッカランの香味バランスは、
- 穀物起源のモルティさ(3-メチルブタナール)
- 熟成由来の熟果・フローラル(β-ダマセノン、フェネチルアルコール)
- 樽熟成由来のドライフルーツ・スパイス(オーク由来フェノール)
これらが絶妙に重なり合って成立している。
参考文献(Chapter 5)
- Sources of Volatile Aromatic Congeners in Whiskey.
- Comparison of Aroma Profiles of Whiskeys Fermented from Different Grain Ingredients.
- Poisson et al., JAFC 56(14), 2008
6. 代表的ヴィンテージボトルの香味・仕様分析
1930年代~1970年代に蒸留されたマッカランの中でも、
特に代表的なヴィンテージについて、香味と製法上の特徴をまとめる。
▼ 表5:代表ヴィンテージボトルまとめ
ヴィンテージ | ボトリング年 | 熟成年数 | 度数 | OB | 香味ハイライト |
1938 | 1973 | 35年 | 43% | ○ | プルーン・スミレ・ランシオ感 |
1946 | 1998 | 52年 | 44.6% | ○ | ピート柔らか+ドライアプリコット |
1950 | 2000 | 50年 | 46% | ○ | マーマレード・ワックス・古家具香 |
1962 | 1987 | 25年 | 43% | ○ | リリィ・チェリー・熟したシェリー感 |
1966 | 1984 | 18年 | 43% | ○ | ブラックベリー・ナッティ・チョコ感 |
各ヴィンテージの香味特性(要約)
- 1938年:濃密なシェリー香、熟成樽由来のスミレ様ニュアンス、厚みのある甘みとランシオ感。
- 1946年:ピート使用年。柔らかいスモーク香と濃厚なドライフルーツ様の熟成感が融合。
- 1950年:モルティ感、ワックス様香気、古家具・シダーウッド様の長期熟成感が特に強い。
- 1962年:フローラル感(リリィ)、明るい果実味(チェリー・オレンジピール)。
- 1966年:Golden Promise麦芽効果による凝縮感あるブラックフルーツ様とナッティ・チョコ感。
これらのヴィンテージは、
マッカランの黄金期のスタイルを最もよく象徴しているといえる。
参考文献(Chapter 6)
- The Macallan Distillery Focus.
- An Auctioneer’s Guide to The Macallan Fine & Rare.
- マイケル・ジャクソン『ウイスキー・エンサイクロペディア』
まとめ
1930年代から1970年代に蒸留されたマッカランは、
原料(伝統品種→Golden Promise)・製法(小型直火釜+狭いカット)・熟成(スペイン産オロロソシェリー樽)
という三位一体の伝統が確立されていた。
この時代のマッカランには:
- 苺やスミレ様の華やかなトップノート
- ドライフルーツ様の芳醇なボディ
- 樹脂感を伴う深いランシオ香
が見事に融合していた。

マッカラン Macallan 1962 (80°proof, OB, Campbell, Hope & King, Rinaldi Italy)
スコア:95pts
テイスティングノート:
- ファーストインプレッション: やや濃い琥珀色。ディスクが厚く、琥珀色の厚い透明層が高貴な印象を与える。レーズン(++)、赤みを帯びたドライフルーツ、赤肉メロン(++)、濃厚なカシス(+)、なめし革、深みのあるレザー(++)。時間と共に燻製感が増し、ピーティーな印象(++)。焦げた麦(+)、奥から木苺(+)、酸味の少ないオレンジ。
- ミドル: ボディが分厚い(++)。舌上に漂う据えた感覚。酸味の少ない梅の皮、焦げた麦感、湿った木材。この年代独特の魅力的な渋みがある。焦げた麦、燻製感がフィニッシュにかけて増す(++)。香木、ナッツ、生姜、かすかにレモン。
- フィニッシュ: 返り、鼻抜け共に素晴らしい。風味(喉から鼻)は燻製された麦、杏、レーズン。余韻ではブラックペッパーとイチジク。角が立たず、輪郭は丸いが、芯がしっかりしている。時間と共にクリーミーに変化。
表1:テイスティングノートまとめ
特徴 | 内容 |
ファースト | やや濃い琥珀色、厚い透明層、高貴な印象。レーズン、赤肉メロン、濃厚なカシス、なめし革、深みのあるレザー。燻製感、ピーティーな印象、焦げた麦、木苺、酸味の少ないオレンジ。 |
ミドル | ボディが分厚い。舌上に漂う据えた感覚。酸味の少ない梅の皮、焦げた麦感、湿った木材。渋み、燻製感、香木、ナッツ、生姜、かすかにレモン。 |
フィニッシュ | 返り、鼻抜け共に素晴らしい。燻製された麦、杏、レーズン。余韻ではブラックペッパーとイチジク。角が立たず、輪郭は丸いが、芯がしっかりしている。クリーミーに変化。 |
備考:
マッカラン1962。80プルーフ。
14~15年熟成であると推測され、表面ラベルの右肩に蒸溜年のエンボスがあるのは、本ボトルまで。
スコットランドで燃料危機が発生し、最も過酷だったのが1962年と言われ、リリース本数も少ないようです。周辺蒸溜年OBと比較しても、ピーティーさが際立っています。
1965-1975にかけてスチルが6から21まで増やされた過程で、マッカランは何かを失ったとされていますが、おそらくは60年代前半から66年頃まで、しっかり捉えることが出来る「赤肉メロン」のようなフレーバーのことではないかと思います。60年代半ばまでのロングモーンにも感じられる(ロングモーンはややチェリー寄りか?)要素です。
60年代半ばから後半にかけては、イチゴのような要素に変化して、その差はわずかですが、ボウモアの南国感がパパイア・マンゴーからグレープフルーツ・パイナップルに変遷していった程度の「差」はしっかり感じ取ることが出来ると思います。
本ボトルは、比較の結果とも言えますが、ブローラ72やクライネリッシュ・ホワイトラベルを思い起こさせる、強いピーティーな麦とかなり深みのあるレザー感、そして果実的な要素が見事なレイヤーを形作っていて、純マッカランスタイル+αを味わえるという意味で、非常に貴重なオフィシャル・ヴィンテージであると考えます。
1950年前後に大麦はアーチャー種から、ゼファー種に切り替わり、1960年代後半からゴールデンプロミスを採用したという歴史であるわけですが、同じゼファー種であっても、個人的には直近飲むことができた1957年蒸溜と、1960年蒸溜、本1962年蒸溜を比較してみると、麦感・ボディにおいても差があるように思います。
共に芯がしっかりしていることは同一ですが、57では重さが、62年では厚さが際立っているのです。
どうもこの間、徐々に厚みが増していき、1960年を境に奥からオレンジの支えが強く感じ取れるようになるようです。
当時の嗜好に基づくヴァッティングの方向性の違いなのかもしれませんが、1960年のボトルでは、ボディは重さと厚みが共存し、味や香りの輪郭が捉えやすくなってはいるものの、まだ華やかというよりは骨太な印象で、荒々しい印象でバランスされているように思いました。
表2:マッカラン1962 製品情報
図1:マッカラン1962 ボトル画像




項目 | 内容 |
蒸溜年 | 1962年 |
ボトリング | Campbell, Hope & King, Rinaldi Italy |
アルコール度数 | 80プルーフ(約45.7%) |
熟成年数 | 推定14~15年 |
特徴 | ピーティーな麦感、深みのあるレザー感、果実的な要素 |
表3:大麦品種の変遷と特徴
時期 | 品種名 | 特徴 |
1950年前後 | アーチャー種 | 重厚なボディ、麦感が強い |
1960年代前半 | ゼファー種 | 厚みのあるボディ、オレンジの支えが強い |
1960年代後半以降 | ゴールデンプロミス | 華やかさとフルーティーさが特徴 |
表4:類似ヴィンテージとの比較
ヴィンテージ | 特徴 |
1957年 | 重さが際立つボディ、骨太な印象 |
1960年 | 重さと厚みが共存、味や香りの輪郭が明確 |
1962年 | 厚みが際立つボディ、オレンジの支えが強い |
表5:関連ヴィンテージとの比較
ヴィンテージ | 特徴 |
ブローラ1972 | 強いピーティーな麦感、深みのあるレザー感 |
クライネリッシュ・ホワイトラベル | 果実 |
【マッカランOB:簡易テイスティングノート】
1963
f 濃い琥珀 レザー 杏 火薬 硫黄 バームクーヘン 蜂蜜 バニラ 炭 外に出て来る
レーズン 墨汁
1964
f 若干奥にこもる 炭 っぽさは1963と比較して弱い 巨峰 弱めにナッツ 酸味はアセロラ寄り 琵琶 アップルパイ ダームラム ブランデー バニラ オレンジ
1968
f 奥にこもる 動物的脂肪酸 生ハム 豚の燻製 ヨード 岩塩 多少のゴルゴンゾーラ 時間が立つと上品になってきた 麦感豊富
1971
f 桃のかんずめ 黄色 プルーン 一番色が濃い ホットケーキミックス プリンのキャラメル 焦がし砂糖 べっこう飴 オレンジなし ミカンというよりはブドウ
1974
f 花っぽい 軽いキンモクセイ ツツジのように蜜っぽい アカシア とっても華やかな(一番華やか) 蜂蜜 奥に墨汁 アルコール 緑色のメロン ジューシーなメロン 干し柿
m ボディの線は細いが エッジが立っている
1977
f チーズ スナック菓子 グラタン チーズ 枝豆 時間が経ったら、パン マドレーヌ スポンジ オイリー エッグ 生玉子 金平糖 スミレ ほうじ茶
1980
f チーズっぽすぎないチーズケーキ クリームブリュレ オレンジの皮




マッカラン Macallan 1957 (80°proof, OB, Campbell, Hope & King, Rinaldi Italy)
スコア:BAR飲みのため非公開
ファーストインプレッション
濃い琥珀色。杏、軽く火薬、イチジク(+)、レーズン。レザーの深みはあまりない。アルコール感しっかりしている。軽く油分。ディスクは厚みがしっかりしている。
ミドル
焦げた麦。ボディの厚みがある感じではなく、むしろ重さが目立つ。舌上に漂い染み込む。軽く杏の皮の渋み。甘みが少ない。下顎ロック。湿った木材。
フィニッシュ
鼻抜け素晴らしい。焦げた麦。スパイシーさが黒胡椒、唐辛子。余韻で、シェリーの層の上に緑の要素。植物は葉っぱ、草。塩気は少ない。
解説
マッカラン1957、80プルーフ。60年代蒸溜と比較すると、甘さが控えめであることが率直に印象深いです。無骨で、華やかさは控えめであるものの、気品があるという、不思議な感覚。
1950年前後に大麦はアーチャー種から在来種に切り替わり、1960年代後半からゴールデンプロミスを採用したという歴史ですが、同じゼファー種であっても、個人的には直近飲むことができた1957年蒸溜と1960年蒸溜、本1962年蒸溜を比較してみると、麦感・ボディにおいても差があるように思います。
共に芯がしっかりしていることは同一ですが、57年では重さが、62年では厚さが際立っているのです。どうもこの間、徐々に厚みが増していき、1960年を境に奥からオレンジの支えが強く感じ取れるようになるようです。当時の嗜好に基づくヴァッティングの方向性の違いなのかもしれませんが、1960年のボトルでは、ボディは重さと厚みが共存し、味や香りの輪郭が捉えやすくなってはいるものの、まだ華やかというよりは骨太な印象で、荒々しい印象でバランスされているように思いました。




【短評】どこかOBやG&M-グレンリベットボトルを彷彿とさせる通好みの一本
【スコア】91pts
【ファースト】:濃い琥珀 イチゴ 酸味 黒糖 ビターチョコ フルーティーな香り 焦げた麦感 キャラメル カスタード
【ミドル】:穏やかなボディだが、かつてのOBを彷彿とさせる高貴な膨らみ 焦げた麦 桃
【フィニッシュ】 :鼻抜け優先 余韻が長い 返りも優しいが麦感豊富 イチゴ 杏の渋み 水分豊富
MMA2010でゴールドメダルとなった、G&Mスペイモルトマッカラン1970/2009。
WMLパリで、1981のロッホサイドとともにLMDWによってボトリングされたもの。
スペイモルトということで加水ではあるものの、どこかOBやG&M-グレンリベットボトルを彷彿とさせる通好みの一本といえるかもしれません。


Macallan-Glenlivet “Aged 33 Years” – Gordon & MacPhail / Donini S.r.l. Import (75 cl, 43 % vol.)
推定項目 | 年代・範囲 | 根拠(主な法規・市場証跡) |
ボトリング(流通)年 | 1972〜1974 頃〈最有力:1973〉 | ① インポーターが Donini S.r.l. (Milano) = 1960年代半ば〜1973年頃に限定 ② 容量が 75 cl 単独表記(英国液量併記なし)→ EU 指令 75/106/EEC (1975) 以前、イタリアでは既に 75 cl が標準 ③ 同じラベル・金箱入り 33 yo を Lion’s Whisky が「bottled circa 1974」と記載 ④ WhiskyAuctioneer が同ボトルを “1960s Donini Import” とカテゴライズ(実際の瓶詰は1970年代初頭と注記) |
蒸留年 | 1939〜1941 頃〈最有力:1940〉 | 年齢表記 33 年 → 上記ボトリング範囲から逆算 + “Macallan-Glenlivet 33 yo 1940” の実在を複数の市場データが裏付け(Vintage Grand Cru、WhiskyParadise など) |
熟成樽 | 全量ファーストフィル・オロロソ(G&M のインタウォー仕様に典型) | |
度数 | 43 %(当時 G&M の輸出用常用強度) |
※完全一致するヴィンテージ刻印が欠落しているため「1939-41蒸留/1972-74瓶詰」というレンジ推定になります。
ネックに残る伊・税務ストリップ(UTA / UTIF)の年号・ロットが判読できれば1年単位で確定可能です。
ラベル/ボトル・ディテールの深掘り
観察ポイント | 意味・年代シグナル |
Donini S.r.l., Milano + UTIF N.648 | Doniniは1960年代中頃〜73年に G&M ライセンス品を独占輸入。UTIFコードは 1967 年の伊・改正酒税法で導入。 |
容量 75 cl のみ | イタリアはワイン・蒸留酒とも1960年代末に 750 ml 規格へ完全移行。併記が無い=輸出先がメートル法圏のみ。 |
赤キャップ+伊税ストリップ | 1973年3月以前のデザイン(1973/4 以降は緑帯入り)。 |
“A PURE HIGHLAND MALT” 語順 | G&M が1950年代後半〜1975年まで採用した2代目ライセンスラベル。 |
43 % vol. | UK 70 Proof表記を廃し vol.% だけに統一した移行期ラベル(イタリア市場向けは1970年前後に完了)。 |
テイスティングノート (実際の同ロット試飲記より)
Macallan-Glenlivet 33 yo (≈1940/1973, 43 %)
引用:Diving for Pearls blog tasting, bottle split of Donini import
- Nose – 海風とタンポポ、ネクタリン、ブラックベリージュース。干しカシス、落葉、ダイフク餅、ほのかな煙草葉とパルミジャーノの擦りたて。
- Palate – 一瞬甘いがすぐにザクロやクランベリーの酸へスイッチ。黒イチジク、蜜蝋、シーシャの煙、ビターオレンジピール。熟成シェリー由来のコーヒー豆と漢方。
- Finish – 非常にロング。黒イチジクリキュール→ドイツ薬草リキュール→雨上がりのチェリー畑。ビター&スウィートの完璧な往復。
- 質感 – 口当たりは絹。オールドマカラン特有のオイリーさとワックス感がまだ健在。
コレクション価値と市場動向
- 希少性 : Donini 期の 33 yo はヴィンテージ表示が無い分、偽造が難しく近年評価上昇。箱付き完品で €4,000 – 6,000。
- 状態評価 : ①税ストリップの完残 ②液面ハイフィル ③ラベルのオフセット剥げ無し が揃えば A-評価。
- 真贋チェック : キャップ周囲の金色六角模様+Donini輸入貼紙の紙質(やや繊維質)を要確認。
まとめ
- 最も蓋然性の高いスペック
- Distilled → 1940(±1)
- Bottled → 1973(±1)
- Age → 33 Years, 43 % vol., 75 cl
戦前蒸留のマッカランを初期 1970 年代にイタリアへ送った、いわば “第二次伊G&Mゴールドラッシュ” の代表作です。
@とぅーる 抜栓直後は絶妙な濃さの高貴なシェリー。まさに真っ赤に熟したイチゴ,木の精油。裏で広がるパパイヤ。度数をはるかに超えた充実感。そんな印象でした。もちろんとんでもなく美味かった。しかしラストワンショットとなった今,まったくの別物になっています。弾ける黄色い果実。パッションフルーツのゼリー部分をフロートしたかのような鮮烈な香り。60年代中頃のボウモアにも通じるユーカリやミントのような清涼感。麦感は度数以上にしっかりしている。奥から時を経て粘土っぽさに変わった想像される丸いピート感。口に含むと黄金桃の果肉から滴る果汁そのものを感じさせるミドル。淡いココナッツ。マンゴスチンと龍眼の余韻。鼻抜けと同時に脳がゾワっとする,陶酔感極まるモルト。私の求めるモルトがここにあった。もちろん方向性は異なりますがサマバンクとタメを張る頂点モルト。間違いなくトップ3に入る。突き抜けたボトルがいかにモルトへの意識を変えるかがよくわかる一本。タケモトさん,本当にありがとうございました!しかし,もしこれが50度前後あったら・・・