タケモトカツヒコ (プロフィール)
【スコア】 92 pts
【ファースト】:やや濃い琥珀 プラム 杏 いちじくの丸煮(+) 薄いグレープジュース パイナップル(+) 奥から軽く燻製系のピート(+) 土っぽさ 薬草リキュールの香り 素朴な麦感(干した麦) 時間とともにべっこう飴 タバコの葉
【ミドル】:丸く広がり、舌に染みこむイメージ 決して厚くはないが、やや燻製~焦げた麦(+) ミント(サマ1959ほどではない) オレガノ 枯れた月桂樹の葉
【フィニッシュ】:返り優先 甘さが粘性あるテクスチャで、黒胡椒のようなスパイス質を内包している シシトウ 軽くミント メントール プラム パイナップル 赤黄色系の果実イメージ 余韻でやはりケイデン的ミネラル分 灰質
Glen Grant-Glenlivet 22yo 1957/1979 (80 Proof, Cadenhead’s Dumpy, Black label, Sherry Wood, 26 2/3 Fl.oz)
グレングラント 1957年蒸留 22年熟成相当。黒ケイデン。
好きな蒸溜所はと聞かれれば、ボウモア、スプリングバンクと答えるのですが、好きなリージョンとはと聞かれれば、断トツでスペイサイドと答えたくなります。一体どういうことなのか。。。?
グレングラントは個人的スペイサイドランキング(総合)でも、マッカランに次いで2位、リベット、ロングモーン、ストラスアイラときて、グレンファークラスが続く感じ。
これも今まで「評価できるボトル」にどれだけ多く出会っているかということの証左で、1本同士の対決ならばドイツスーパー向けの1965などファークラスでも突き抜けたのがありますし、あくまで出会ったことがあって記憶に残るボトルの平均点比較に過ぎません。
そんな私にとってのグラントなのですが、これはもう、評価できたボトルの9割9分が、G&Mのおかげです。
シルバージュビリー(1952/1977)のボトルもよくよく見れば、G&Mリリースのものとは違って、正規に蒸溜所オーナー会社のネーミングが入ってはいるものの、「見た目も中身も」G&Mラベルと同じ。。。何か違いがあるかと問われれば微妙です。
ハイレベルなシェリー樽にはスミレの香りが出ますし、イチゴも出ます。でもヒネも出れば、若干硫黄っぽいものもあります。どちらに限った話ではなくOBもG&Mも一蓮托生のようなものです。
マッカランやリベットには独自オフィシャルボトルがありましたが、グラント、ストラスアイラはもはやG&Mこそが(ボトリングで言う)ブランドホルダーという感じ。これがもう長年にわたって頭に焼き付いたイメージでした。
そんななか、サマローリが1999年にリリースした1959年蒸留(40年熟成相当)ボトルを(さほど間をおかず)入手して飲んだ時に、めっちゃ「ミント・メントール」の味がして、これまで飲んできたG&Mのどのパターンにもない構成に新鮮な驚きを覚えたことがありました。
今回のこの黒ケイデン1957/1979(22年熟成相当)にも、それがあるのです。
WFに最近サマローリの1959のテイスティングノートが掲載されて、読んだ時に、そうだったそうだったと大いに共感して、改めて黒ケイデン1957(こちらのノートはUPされていないようです)を飲んで見ることにしました。
このG&Mでは出会ったことがない、ミント、メントールは一体どこからきているのか。。。?
G&M単体でもメゾンでも、50年代後半蒸留は割と濃いシェリー樽のものが多かったから分からなかったのか。。。?
G&Mへは純度の高いシェリー樽で渡して、ケイデンは使い古し~ナチュラルカスクで購入、独自に詰め替えたのか。。。?
そんなこんなで興味は尽きないわけですが、G&Mではなくケイデンで同時期蒸留、70年代詰めで比較出来たというだけでも十分価値がありました。
熟成年数も22年と当時では長めなのかもしれませんが、渋み苦味、ウッディさが出ることなく、ラベルがぐちゃぐちゃなのはワイン倉庫にしまってあったからという、元オーナーの言も信じられる盆栽状態かなと、粘性のあるテクスチャも出ていて、見た目よりは良好でした。
採点としては、G&Mにない個性を有していること、潰れない程度のシェリー樽効果(薄いもののバルヴェニー1972と共通のグレープジュース感あり)、盆栽とその恩恵を受けたテクスチャ、渋み苦味ウッディさが出ていないという部分でプラス加点。アルコール度数ともうちょっとボディに迫力が欲しかったというところでマイナス評価しました。
【追記1】黒ケイデンの当たりボトルに多い特徴というべきか、シェリー樽熟成の場合、80プルーフ表記時代にはシェリーウッドだとかダークシェリーウッドというシールが貼ってあるので、フェイク対策込みで覚えておいてもいいかもしれません。(そのフォントサイズが曖昧で、ボトルごとに大小あります。)
【追記2】近年のドイツ系ボトルが持つ粘性は、こういう盆栽効果を人工的に演出したいということなのかなと。。。ただ人工的なのはベタつきますし、時間をかけた瓶内変化は「抱合体」を作るように、中身を包みこむような効果が出ている気がします。親水性なのに粘性が出ているという、盆栽にはそんな不思議なボトルもあったりします。