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グレングラッサ Glenglassaugh 40yo 1965 (46.7%, TWF, Fino Sherry butt, 361 Bts.) 

タケモトカツヒコ
タケモトカツヒコ
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タケモトカツヒコ (プロフィール


【短評】良質なブドウの香りと渋み、酸味のフレーバーが見事に融合


【スコア】BAR飲みのため非公開


【ファースト】:琥珀 高貴な香り マスカット連想のブドウと渋みを感じさせる香り 瑞々しい 桃 洋ナシ キウイのヒント

【ミドル】:ボディは程よく広がる感じ 程よいアルコール感 若々しく活きている 柑橘系はグレープフルーツ

【フィニッシュ】:鼻抜け◎ 返りもしっかり 風味はシナモン スパイシーさはコショウ やや瓜系 酸味はやはりグレープフルーツ


ウイスキーフェア向けのグレングラッソー1965。

長くシングルモルトを飲んできた層に、度々高評価を得るのが「フィノシェリー樽」でありますが、本ボトルも各媒体で賞賛されました。

人気の理由としてこれらが決して「変化球」だからということだけでなく、フィノシェリー樽熟成(あるいはフィニッシュ)の特徴なのだと思いますが、オロロソシェリー樽が巨峰だとすると、マスカットのような程よい酸味を持った「ブドウ」のフレーバーがあって、それが「麦」とぶつかることなく、それぞれに方向性の違うベクトルとして伸びていく点にあると思います。

オロロソの場合は各フレーバーを包み込むように作用することがありますが、フィノだとそれが起こりにくい印象です。

参考:

Glen Garioch 13yo 1975 (57%, Samaroli, Handwritten label, +/-1988, 75cl) 221122


さらにオロロソ熟成→フィノフィニッシュが非常にうまく噛み合った場合に(本ボトルはそこまでではないと思いますが)、適度に重さがありながら渋みを除去したような、シルキーなボディを演出してくれて、高貴な印象を獲得するものがあります。(代表例としてマッカランESC1<注:フィノ詰替ではない可能性もあります>)

またシェリー系ホグスヘッドだろうと思われるボトルや、濃厚シェリー+他種樽のヴァッティングでも同様な傾向があって、代表例はスプリングバンク12年サマローリ・フルプルーフ、グレンカウダー1964が挙げられると思います。

オロロソで覆い尽くしたような、フレーバーをシェリーの層からピックアップしていくものが近年のグレンドロナック70年代前半、スプリングバンクOBビッグSの1964(46%、90年後期流通)かなと。改めて思い出してみると、そういった傾向として捉えています。

こういった甘くないのに粘性を帯びたようなシルキーな(空間的)テクスチャ(脂肪酸/油分層由来か?)というのは、今のところブランデーや他の蒸溜酒では出会ったことがなく、ウイスキーだからこその「極地」なのかなと想像させるものがあります。


そもそもこういった「複雑性」は、シングルカスクのみに求めるには出現確率が低すぎる現状があり、ヴァッティングでのリリースをもっと受け入れる土壌を作らないと辛いなと考えさせられます。近年リリースのシングルカスクに飽和感を覚えられた方やオールドボトルラヴァーな方々は、むしろヴァッティング好きなのかもしれません。

ヴァッティングでもフレーバーやテクスチャの輪郭をハッキリ表現できるというのが、個別樽の特徴を掴んでいるブレンダーの技量なのだと思います。こういったブレンダーを育てるためにもシングルカスク偏重が行き過ぎないように願うしかありません。