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グレングラッサ Glenglassaugh 40yo 1973/2014 (52.1%, OB, Rare Cask Releases Batch 1, C#6801, Finished in the finest Manzanilla Sherry Puncheon)

YOYOKARE

[opentasting]


タケモトカツヒコ (プロフィール


【スコア】 93 pts (抜栓直後)


【ファースト】:ウイスキーとしては最大限に濃く、赤みを帯びた琥珀 ファーストインプレッションとしては直近年詰めのドロナック イチゴはあるもののさすがに72ほどではない(+) 木苺(+) 濃厚な巨峰(+) スミレ(++) 時間経過とともに、意外なことにピーティー(煙>燻製 ヨードは殆ど感じない)かつワイルド (++) ミネラル分が目立つ 許容範囲内で硫黄 ヒネてはおらず、バランタインやバーギーが好みならむしろ加算できると思われる ここでも草は全く感じない

【ミドル】:72もそうだったが、ボディはかなり繊細 舌上で薄く固く広がるイメージ この点ゲラヒに近い 焦げた麦質 時間とともにカスタードクリーム(+++) ここが本ボトルの一番の魅力だと思われる 舌上へのパレートはとても高貴で、香りよりも味のほうが素晴らしい ウッディさもほとんど感じない

【フィニッシュ】:鼻抜け優先 返りも充実(+) スミレ(++) 巨峰 ドライで水分を奪うイメージ 切れ上がる余韻 とことん巨峰の皮側 長熟らしい締まる渋み 甘さは奥側にひっこんでいる スパイシーであえて表現すれば黒胡椒だが、唐辛子のようにホットではなく、やはりこれもバーギーを連想させる「切れ上がるスパイシーさ」(++) 時間とともに余韻はクリーミーかつシルキーに(++) 樽感は高貴かつ素晴らしい(++)


本ボトルは「the finest Manzanilla Sherry Puncheon」によるフィニッシュ作。

シェリー酒の大別として、ウイスキーにおいて最も知名度が高いと思われるのが「オロロソ」ですが、「フィノ」や「マンサニージャ」、「アモンティリャード」、「パロコルタード」など、製法や生産地域によっても呼称区分けがあるようです。(このほか極甘口も)

使用されるのは白ブドウ(パロミノ、ペドロ・ヒメネス、モスカテルの三種)で、絞られたぶどう果汁(モスト)は、優しいタイプをフィノ、強いものをオロロソに選り分けるなど、試飲によって決めていると言われますが、その中には使用比率が明かされているものもあります。

またアルコール発酵終了時点での度数は11~12%。発酵終了後の白ワイン状態の液面表面には「フロール」と呼ばれる酵母の膜が現れ、その【フロールの働きによってシェリー酒独特の香味やテクスチャを生み出す】と言われている模様。

続いてアルコール添加を行い、フロールが生育できる18%までのアルコール度数をキープするものに「フィノ」があり、超えてしまいフロールの作用をアル添時点でほぼなくしてしまうのが「オロロソ」。

フィノはフロールの働きによって酸素を遮断、スパイシーでドライな仕上がり。オロロソは逆に酸化を進めることとなり甘さが台頭。共にこれをシェリー酒における熟成効果と呼んでいるようです。(wikiでは後者のみを熟成と説明)

【マンサニージャ】はフィノとほぼ同じ製法であるものの、熟成された土地に違いが有るとのこと。日本では辛口、ドライシェリーという分類がなされています。


マンサニージャを明記したボトルというと、直近ではSMWS(昨年末)の25番ローズバンクが記憶に新しいですが、本ボトルはローズバンクよりも度数が低いにも関わらず、かなりヘヴィーでワイルドな印象があります。

セスタンテグリーンのグレンバーギーが一番印象に近い感じで、切れ上がり、やはりフロール環境下にあったスパイシーさと、仕方がない(でも決してマイナスとは言えない、セスバーギーよりはマイルドな)硫黄殺菌による影響を感じさせる仕上がりになっています。

このあたりは、ウイスキーにおいてもスパイシーさや切れ上がりといった、ただただブドウだけではない部分に関しても付加価値を見出せるような人にとって、特に魅力が大きいのではないかと。ワイン好き、シェリー好きのドリンカーにとっては、より一層の興味を惹く中身なのではないかと思われます。

ブドウ方面に明るくない自分も「何かクセになる」ような要素に気付かされます。

本ボトルがマンサニージャを明記してくれたことで、これまでのボウモアもそう、バンクもそう、アードベッグでもドロナックでも思い起こされますが、実はシェリーカスクと表記があり、色も濃いものでありながら、決してオロロソではない、ドライシェリー熟成品だったものは従来とてもたくさんあったのではないかと、G&Mの硫黄系はほぼそうだったのではないかと思わざるを得ません。

イチゴ要素は甘さが少ないため、オロロソには足りないと思いますが、このスパイシーさや、なんと表現したらいいのか、鋭いスパイシーさとクリーミーさの共演みたいなところは、ビッグSバンクにもとても多発していたもので、それはそれで素晴らしい魅力のあるものでした。それらもフィノやマンサだったのかなと、このボトルには学ばせられるところ大きいです。


こういう表現になる時点で、近年詰め(擬似)シェリーとの比較ではまったくないわけで、本ボトルの圧倒的なクオリティには脱帽せざるを得ません。

唯一、硫黄処理が微塵でも気になる人は高く評価できないかもしれませんが、その場合でもオールドボトルに興味がある人には、2杯飲んで、これこそ辛口ドライな濃厚シェリー樽であることを、記憶に叩き込んでから挑んで見られると、とてもスッキリ整理ができることと思います。

G&Mシェリーの半分は、本ボトルによって明確に系統立てられる気がします。

そういった意味では72よりも得られる経験値が高いです。

【グラス】

本ボトルも手持ちではブルゴーニュグラン・クリュが圧倒。小さめなグラスよりも大きいボウルがオススメです。

次回は68。ブロマガでより詳細な蒸溜所レビューを連載中です。