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ロングモーン Longmorn-Glenlivet 1964/1978 14 yo (80 Proof, Cadenhead’s Dumpy, Black Label, 26 2/3 fl.oz.)

 

タケモトカツヒコ

[opentasting]


タケモトカツヒコ (プロフィール


【スコア】 96 pts


 【ファースト】 薄い琥珀 黄色い果実イメージ(++) 粘性があり、水分が少ないレモンの酸味、甘さはしっかりしたパイナップル 麦質豊富でややデンプン様(++) 奥から軽く燻製感 

 【ボディ】 ボディは瞬間的に大きく膨らむ 芳醇な麦の素朴な印象(+++) 奥からかすかに燻製質 ミネラル分 鉱質 軽くオイリーで粘性のある質感

 【フィニッシュ】 鼻抜け優先 パイナップル レモン 余韻に圧倒的麦質 ごくごくわずかにスパイシーな部分があるが、その上に豊富な麦質が鎮座する 蒸した甘さのあるサツマイモ ミネラル分は黒ケイデンの他のリリースとも共通した、鉱質の加水水を思わせる


Longmorn 14 yo 1964/1978 (80Proof, Cadenhead’s Dumpy, Black Label)

ロングモーン1964/1978 14年熟成相当。黒ケイデン。

昨年のGW以降、個人的にスプリングバンクと共に課題だった蒸留所です。


ここ直近5年程度、JISケルティックを始め、日本は60年代蒸留ロングモーンの入手に恵まれた環境にあったと思います。

しかしながら赤みのあるトロピカルな果実感が魅力としてもありつつも、30年40年という長い熟成を経て、多くはウッディさと共存、濃厚なシェリー樽仕上げで出てくることは少なく(SMWSの68は強印象)、更にもっと色々な香味構成を「端から端まで」味わい尽くしたいという願望が募りました。


ムーン、イントレ、アンティカサと60、70年代蒸留の短期熟成品を中心に複数本開けて同時に飲む機会に恵まれましたが、そうした中にあっても、この黒ケイデンは自分が飲み始めた頃から、非常に評価が高く、入手困難で、当初張り替えフェイクを掴まされたりと、一悶着あった上で無事入手に至った1本であったことも加わって、とても思い出に残るものとなりました。ただ、飲んだら一発で本物かどうかは誰にでも理解できるだろうというぐらい強烈なインパクトがあります。


このボトルの何が良いかというのも、14年相当の短期熟成品、70年代詰め、少数樽のヴァッティングというところで、しかも化粧っ気のない、麦質豊饒なボディに、水分少な目な黄色の果実味、さらに粘性のあるテクスチャと、のちに様々な仕上げを経ることになる「前段階」を堪能できるという点が、今から考えれば、他のボトルでは代えがきかない、唯一無二の個性になっていると思います。

敢えて例えて言うならば、ドロナックの緑ダンピーをぎゅっと凝縮させて、水分を脱水したような、麦のデンプン質に重さがあるような感じです。


イベントの再飲で改めてみんなで話していましたが、このボトルを通過してから、アンティカサやインタートレード等の強烈な60度前後の度数、しっかり仕上がった内容のボトルに触れても、「確かにここにも共通項がある」と、特にボディ芯の部分が容易に取り出せるようになった気がします。

採点的には、短熟、瓶内熟成の進展、圧倒的存在感のある「素朴な麦質」と果実香味でプラス加点、1本ですべてをまかなうという観点で言えば、シェリーでないこと、アルコール度数でマイナスせざるを得ないのかというところ。しかしながらそれすら些細なことだとも思えるほど、何杯でも飲みたくなる酒質を保っています。

ロングモーンも長くて20年程度の熟成で、ガラスボンボン瓶内変化でキープして欲しいなと。そのあたりが最もボディに厚みが出て、アルコールの分離も迫力を失わずに抑えられるラインだと予想され、苦み渋味が現れないのではないかなと。。。ただ90年代蒸留のロングモーンはかなり植物質で、やや将来的に不安もあるかなというところ。

黒ケイデンシリーズの中でも間違いなくトップランクの1本だと思います。

鉱質ミネラル分は、おそらく70-80年代詰めのケイデン、ダッシー、サマローリにも共通する瓶詰めや加水に使われた、「ケイデン水」の影響ではないかと。これがまたクセになるやや灰質にも思える要素として、このボトルにも健在でした。