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マッカラン Macallan 10yo ‘Cask Strength’ (58.8%, OB, 100cl)


タケモトカツヒコ
タケモトカツヒコ
[opentasting]

タケモトカツヒコ (プロフィール


【短評】赤みを帯びた琥珀 濃厚シェリー ボディしっかり フィニッシュはパワフルでガトーショコラのフレーバー


【スコア】85pts


【ファースト】:やや赤みを帯びた琥珀 上面発香の勢い素晴らしい(++) 杏(++) 動物的脂肪酸(なめし革)(++) 奥に感じる酸味はオレンジ 甘みのしっかりとしたチョコレート(++) 焙煎コーヒー

【ミドル】:ボディはしっかりしていてパワフル 焦げた麦感 杏やプルーンの渋み 燻製 チョコレート 焙煎されたコーヒー タンニン

【フィニッシュ】:鼻抜け、返り共に勢いがある(++) 切れ上がる 焦げた麦 七味唐辛子(++) チョコレート 余韻はガトーショコラの食後感


7/10(**2010年)のイベントに向けて体調はもちろん、味覚もニュートラルにしておきたいと思い、開栓したのがこのマッカラン10年カスクストレングスのリッター瓶。

リッター瓶に関してはレシピが統一されていて、販売地域や代理店に寄らないなどと噂されていた、世紀末のボトリング。

JEREZ(ヘレス)のシェリー樽である旨がラベルに表記され、今や10年熟成でこのレベルのマッカランはリミテッドリリースでもなかなか出てこなくなってしまいました。

海外評価を見てみるとこのボトルは81点(採点時期は不明です)。現在の私ならもっと高得点を出すと思います。

①思ったことは、味覚の評価はやっぱり過去の経験との比較、記憶との比較であって、なおかつそのボトルがレアであれば評価は上がり易いのではないかということです。

このボトルをブラインドで飲んで、今の時代に素で81点と言う方は相当良いモノばかり飲んでいるのではないかと。そう思います。

でも当時は特に珍しくもなく、本数も十分に提供されていて、言わばどこにでもありました。この時期に採点するならばノルアドレナリン(緊張感に関連)の閾値は上がらなくても当然です。

このボトルは当時、私にとって日々必須の存在になっていて、初めてダース買いをし、その後医薬品倉庫の一角で保存してきました。

そのため、まず本職でもありますが状態は最善を尽くしてあった分、ほとんど角が取れたような印象はなく、活き活きしています。

②開栓せずにベストな状態で保存をしていけば、58度ものアルコール度数であっても10年程度は大丈夫ということでしょう。

でも私も含めて、瓶詰めから年数がたつことで、丸くなったり多少フレーバーの分離が生じているボトルを好む嗜好もあるのかなと思います。

①の要素は、特にアイラモルトではレア度と度数による勢いが重視されると思います。

②の要素は、その他のリージョンでは瓶詰めから時間が経ったり、長熟のボトリングの方が評価されるような気がします。

どれもこれも嗜好性と一纏めにしてしまうのですが、同じボトルでもその提供の仕方と時期によってもちろん評価も変わるものですよね。

酸化で角が丸くなり、気圧の変化で樽内とは必ずしも方向性が同じではない、再度の化学反応にさらされたお酒を飲んだとしても、瓶詰め後リアルタイムに飲んだ感想とはかけ離れてしまって当然。。。

やっぱりケルティックのような長熟リリースもそうですし、新規リリースにも積極的であることで、上記の溝ははじめて埋まるのかもしれません。

蒸溜所やお酒屋さんからすれば、基本リアルタイムリリースによって収益を上げているわけですから、その点も重要視しなければなりませんし。。。

でもオールドボトルの魅力ももちろん素晴らしいもので、どちらかというとこちらの方が飲みたいと思う気持ちも偽らざるところ。。。

BARであればやはりそのバランスをバーテンダーさんがどのように勘案して提供してくれるのか。。。?

それが「ウイスキーを扱う人間のセンス」ですよね。

向かい合うバーテンダーさんとウイスキーの話をして共感を得るためには、お客さんはウイスキーを飲みたくてBARに足を運んでいるのですから、お店が同等またはそれ以上のウイスキーに対する経験と記憶、そして意欲と愛情を持ち合わせていることが不可欠であると思います。

経済は厳しいですが、だからこそウイスキーで一時の喜びを得たいお客さんがやってくる。良い頃と同金額で同じ付加価値というわけにはいきません。

お店やお客さんの金銭的な状況にボトルを合わせるのか、お客さんに提供したい付加価値の高いウイスキーであることを何より最優先するのか。

私は一貫して後者の気概を持たれているバーテンダーさんを応援し続けています。

せっかくウイスキーがここまで注目を浴びているのですから、それ以前から扱われている経験値の高いBARに対する評価が突き抜けていくでしょうし、経済状況が良くならなければなお一層飲みたいお酒がないBARは居酒屋やチェーンパブによって淘汰されて行くと思います。

現在の20代が人付き合いだけで成り立つBARに通うようになるでしょうか。。。

お店に魅力がなければ、自分で買って飲むしかないですからね。

いま来ているお客さんだけで考えるだけではなく、まだ足を運んでいない未来のお客さんに向けてのアピールやボトル選択が大事になってくるでしょう。

ぜひ魅力あるBARが増えるように願っています。