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Short Cocktail

 

ショートカクテルのオーダーが中心のBARは、それを望む客からしても、店の評価からしてもある意味極地だと思う。

(上掲動画)1.5倍量、90MLのマティーニは80ML以上がジン。他のカクテルも殆どがベースリカー。量が多ければ満足度も上がり、そうそう杯数は飲めない。時間も稼げる。丁寧に作れる。他との比較でもまず劣るところが見つからないと思う。

ただ問題は、飲み手にダメージの大きいショートカクテルを頼みたくなるバーテンダーには、それ相応の泊が求められるということだと思う。技術じゃない部分が必ず必要とされる。

そのためか最近は既存レシピまたは元々の酒のバランスを崩さない程度に、スパイスを用いて香りづけをし一般的なそれとは変えたり、新感覚を売りとする人もいる。どんな方法であれ確かに他にはないものは伝説を作り得るとも思う。

自分の無知かもしれないが、1+1で3になる(トンビが鷹を生む)カクテルを作ることができる人には会ったことがない。ただ、元の酒にわずかなプラス要素を加えて、他では飲めないものに仕上げるスキルと、わずかな果物で混合したもの同士が分離感なく味わえるレベルに仕上げる腕を持った人は知っている。そこに既存のカクテルブック通りに作っている人はおそらくいない。カクテル作りとは元の酒の「カド」を取る作業だと思う。

 


 

また特にウイスキーに関して言えば、客の求めに応じて出したとしても、それが期待以上の内容でないと客は満足しないという当たり前なことを忘れてはならないと思う。

客の期待は予想以上に高いと踏んだほうがいい。

カクテル中心のBARとウイスキー中心のBARとの一番大きな違いは、「いつもの味」を求める客の比率にあるので、後者は常に新しい出会いを求められる。だから「ボトルを名指しするオーダー」の店では期待に外れるということがザラに起きてしまう。

「おまかせ」オーダーされるにも泊が必要ということになるのかもしれない。

例えばハーフのオーダーなど本質を見極められず中途半端に終わるボトルでなら出さないほうがいい。親切心が店のイメージを壊すことがあるのも間違いない。経営を優先するというのなら、原点は美味しい酒を出すからBARなのであって、酒よりお金が前に出る店では何屋なのか?としか言えない。

客はたいていバーテンダーをおだてる。自分が飲むものを触るから。他の客に対する見栄が必要な人もいる。だからそれを真に受けてはいけないし、少しでも良いものを飲みたいという期待と受け止めるべきだと思う。満足できない酒は、客のオーダーが悪いからとはならない。あの店が悪いとなる。

 


 

だからウイスキーならそれ相応のボトル実物も必要で、大抵の場合それは現行のレギュラー品では足りない(殊更現行レギュラー品の重要性を客に説くBARがあるが、なぜ倍付けで飲まなくてはいけないのかの解説はしない)。トークも必要だけれど、魅力あるボトルが目の前に並ぶなら、行き過ぎたトークは遅かれ早かれ飽きられるか余分でしかなくなる。

BARにとって大事なのはやっぱり酒だと思う。そして同じ酒がそう見えない箔だと思う。

だからとはいえ、もちろん飲める状態でなくては意味がないし、飲ませもしないコレクション自慢に付き合わせる店はBARではなくギャラリーへと看板を付け替えたほうがいい。箔の履き違えは困る。

倍付けの価格を払うのは、決してサービスに対してだけではなく、店が満足を約束してくれる見返りだと思ってくれるぐらいが丁度いい。