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Jim Beam社の”Cooley蒸溜所”買収に思う


Google+やGoogleアラートが便利でウイスキー絡みのニュースがタイムリーに容易に入手できるようになりました。

昨年末、「Distillery」キーワードで多数引っ掛ってきたのが、ジム・ビーム社がアイリッシュのクーリー蒸溜所を買収したというニュース。


http://www.thedrinksbusiness.com/2011/12/beam-confirms-cooley-acquisition/

http://www.whiskyintelligence.com/2011/12/beam-announces-agreement-to-purchase-cooley-distillery-award-winning-irish-whiskey-company-irish-whiskey-news/


1987年ジョン・ティーリング氏により設立。アイルランド政府の経済拡大政策に伴い、ダブリンの北、クーリーにある国営アルコール蒸留所を買収。ポットスチル、パテントスチル等の設備投資により、クーリー蒸留所として開設し、1989年より蒸留を開始しました。
1992年以降、かつてのジョン・ロックス、デリーでの代表銘柄を次々に復活させて市場に導入し、小規模ながらも唯一のアイルランド独立資本によるアイリッシュウイスキー蒸留所です。
ミドルトン蒸留所(ペルノ・リカール社)、ブッシュミルズ蒸留所(ディアジオ社)に次ぐ第三の蒸留所として、着実にその地位を築いています。

http://www.meidi-ya.co.jp/merchandise/alcohol/cooley.html


クーリー蒸溜所はスコッチ系ボトラーからも積極的にリリースを行なっていた、上昇志向の強い企業イメージがあります。

ところが、一昨年~昨年アイルランドでは不動産バブルが崩壊。


元々少し前までポルトガルと並び、欧州の中でも最貧国として数えられていた国でもあり、人口わずか450万人。

90年代半ばまで、長期間経済が低空飛行を続けたアイルランドは、90年代後半からイギリスや米国の景気回復も追い風となって急成長を遂げました。

80年代から90年代半ばまで、GDP成長率が3%程度に過ぎなかった国が、その後07年までの平均成長率が7.5%という驚異的な数字を挙げたのです。

アイルランドが高成長路線にシフトできた最大の要因は、税制優遇措置によって欧米からの投資を積極的に誘致してきたからと言われます。

それらの企業は税制面でのアドバンテージを最大限に活かすためアイルランドを欧州からの輸出基地としました。

さらに21世紀に入って国内で不動産ブームが沸き起こり、不動産や建設セクターが急成長。ところが米国でリーマン・ショックが発生すると、絶好調であったアイルランドはモロに煽りをくらったのです。

不動産市場から海外からの投資マネーが引き揚げられ、こういった建設市場が急速に冷え込んでしまいました。同国出身の世界的なロックグループである 「U2」 を象徴して計画されていた、U2タワーも建設中断。。。


詳細は不明ですが、クーリー蒸溜所も1987年の設立で、設備投資資金回収に困難が生じたか、または、資金繰りの上でも「アイルランドの一企業」として世界と勝負するには限界が来てしまったのかもしれません。

ジムビーム社はクーリー蒸溜所の株主に対して、1株あたり8.25ドルを支払い、トータル75億円(1ドル78円換算)で同蒸溜所を獲得しました。


クーリー蒸溜所は直近データである2010年の売上を見ても、前年比12%の伸びを見せています。

蒸溜開始が1989年ですから、ちょうどこれからが先行投資した分の回収時期と言えるのです。よほど買収に応じるためには理由が必要であったことでしょう。

特に最近ではロシア、ブラジルでのシェア獲得に尽力していました。

Whisky imports growing in Russia as vodka stays on top – Telegraph

http://www.telegraph.co.uk/sponsored/russianow/business/8481210/Whisky-imports-grow-in-Russia.html


スコッチ・ウイスキーにおいてもシェリー樽は枯渇し、良質なバーボン樽への依存度は増す一方です。また出来上がったウイスキーに対する化学的アプローチが一般化するなかで、ジム・ビーム社の決断は、長い目で見るとプラスとなる公算が高いように見えます。

独占禁止法がらみで当初文句を言われるのは恒例となっているので、あまり気にすることもなさそうです。

スコッチ・ウイスキーの価格上昇に対しても抑制的に働いてくれることを願います。