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【最高のウイスキー? 最高に美味しいウイスキー?】

「最高のウイスキー」と「最高に美味しいウイスキー」は、分けて考えたほうがいいのではないかと思っています。

これからテイスティングの方法や、感想・評価の共有共感することの勧めなど、詳しくお話しさせていただこうと思っているのですが、何より根本である「評価の軸」を定めないといけません。

私の経験上、ウイスキーが大好きであることは間違いないし、自らの感想・評価を話すことにも問題ない人であっても、どうも噛み合わないというのか、違和感が残ってしまう場合、その最大の原因は「最高のウイスキーと言うべき存在」と「最高に美味しいウイスキーと言うべき存在」を混同してしまうことにあるのではないかと思っています。

両者が完全に一致する人もいれば、そうでない人もいるのです。別に否定しているわけではありません。

仮に「好み」が違ったとしても、各人の感想・評価を「共有」する、認めることは可能です。というよりも、何度もご一緒して、一緒に飲んで、気心が知れていれば知れているほど、好みが違ったとしても、部分的には「共感」できるのが普通ですし、逆に好みが違ったほうが、自分ひとりでは味わい尽くすことのできないゾーンの発見や理解が進んで、次第にありがたいとさえ思えてきます。

複数人で分かち合うことの素晴らしさは、共感できれば、感動が倍増することでもありますし、(感覚的な体験のために曖昧さが残る)自らの感想に自信が持てる、箔づけが叶うことでもあります。

そしてもう一つ大事なことは、感想・評価に「違い」があったときでも、それらを共有することで、自分一人では気づくことが出来なかった要素に、「気づくことが出来る」ようになることなのです。

ただ、それが適わないことがあります。

あとから、どうしてだろうと頭を回してみると、ある一点の考え方の違いが、全てに影響している気がしてなりません。

それが、「最高のウイスキー」と「最高に美味しいウイスキー」を同じだと考えるか、別々に考える余地を持つかなのではないかと。

「最高のウイスキー」といえば、ただ美味しいだけではなく、価格や希少価値も引っ括めて最高だと思えるウイスキー。

「最高に美味しいウイスキー」といえば、率直にその中身を、最高に美味しいと思えるウイスキー。

そう捉えると前者のほうが、評価する当人の裁量が、広い範囲で介在してしまいます。美味しいけど高価だから、美味しいけど手に入らないから、そういうふうに考えていくと、だんだん中身から遠いところで評価が成立してしまう気がするのです。

別に前者の視点を否定するわけではなく、周辺事情も含めるのか、その中身だけを評価するのかという2つの視点でウイスキーを評価すべきかなと思います。

私自らも、ブログという形態でテイスティングノートを公開して、そのおかげで、きっとそれがなければ知り合うことも出来なかった方とも交流することが叶いましたが、やはり日ごろ頻繁にお会いしたり、お互いのことをよく知っているということが「ない」中では、なかなか深いところを理解し合うというまでには至りません。

特に個々人の金銭感覚や、ウイスキーについての広範な理想像をすりあわせるというのは至難というべきか、もはや不可能なことだと思います。

ですので、いつの日からか、同じボトルについて、まずは分かち合う土俵に立つためにも、この2つの視点を意識的に区分けしておいたほうが良いと考えるようになりました。

ウイスキーそのものが市場価値を上下させたり、希少性を意図して行動するわけではないですので、受け止めた人間が、広い意味での評価、中身だけの評価、二本立てにすることで、少なくても中身については、率直な意見交換が出来るはずです。

一緒に楽しむチャンスを逃さないためにも、ぜひこの2つの視点を持っていただければと思います。