注目キーワード
  1. Bowmore
  2. 1966
  3. Samaroli
  4. Sestante
  5. Intertrade

【トーモア蒸溜所】Tormore Distillery まとめ- 250508

【トーモア蒸留所:概略】

トーモア(ゲール語:大きな丘)は比較的新しい蒸溜所で、ロング・ジョンやバランタインの原酒として利用されていた経緯から、流通量は多くないもののイタリア向けのグリーンボトル・オフィシャル10年、12年(1970年代流通)の人気が高く、サマローリの詰めた1966年蒸留に至っては現在50万円を超える市場価格が付けられています。

ロング・ジョンが手がけた蒸溜所の多くが、すでに閉鎖されていますが、その希少性および個性的な香味要素を持つことから、今現在においても根強い人気を保っています。

またトーモアはよくライトな酒質と表現されますが、それは加水OBのイメージが強いからかもしれません。カスクストレングスでは、オイリーな酒質、オレンジ系柑橘の香味、輪郭のあるボディ、フィニッシュでは胡麻やナッツの余韻が漂う、ある意味「ボディ中域増幅型」のハウススタイルだという印象を持っています。


【Long John 関連の歴史】

1825年 ベン・ネヴィス(設立)

1909年 ブレンデッド・ウイスキー「ロング・ジョン」販売開始

1927年 ストラスクライド(グレーン蒸溜所)(設立)

1937年 グレンアギー(1831-1983)(買収:Seagar Evans & Co. Ltd.名義)

* Seagar Evans & Co. Ltd.は1805年設立。ロンドンのジン蒸溜所Milbank(ミルバンク)の経営者、James Lys Seager と William Evansによって起業。

1957年 キンクレイス(1957-1975)(設立:ストラスクライド蒸留所内)

**某有名書籍に1967年設立との誤記あり

1958年 トーモア(設立)

1967年 ラフロイグ(1810-)(買収:Seagar Evans & Co. Ltd.名義)

***ロングジョンディスティラリー社が1962年時点で経営権の一部を獲得済みであった。

****イアン・ハンターがエリザベス・ミッシー・ウィリアムソンに経営権を譲り、彼女がマネージャーについたのは1954年-1972年。その間にも経営権の移動があったことになる。


【トーモア蒸留所の歴史】

1958年 ロング・ジョンのオーナー企業である、Schenley Internationalが蒸溜所を設立。

当初はロング・ジョンの原酒となるべく作られた(のちにバランタインの原酒にも採用)。元ロイヤル・アカデミー(王立美術院)の会長職にあったSir Albert Richardsonによる設計、スペイサイドで最も美しい蒸溜所といわれ、*20世紀になって初めて新規建築されたスペイサイド地方の蒸溜所である。

*・タリバーディン(1949年)、グレンキース(1958年)は共に既存建築を用いた蒸溜所であった。・建物は花崗岩で作られており、敷地にある時計は1時間で、スコットランドの四季を表現する様式。また長方形の人工池も備えられ、Scotlandが生んだ”カーリング”競技にも用いられている。

1960年 生産開始

このとき蒸溜所の敷地内にタイムカプセルが埋められた。2060年に再度掘り起こされる予定。中身にはスタッフの名前、グループの歴史、大麦、水や樽のサンプルが入っている。

1972年 スティルが4基から8基へ増強。加熱方式も石炭から蒸気へと変更された。1984年からは、地域で伐採されたpine材の余剰部分を利用する方式を採用した。

1975年 Whitbread and Companyがロング・ジョンブランドを含め、トーモア蒸溜所を買収

1989年 Allied Lyons(のちのAllied Domecq)がWhitbread and Companyのスピリッツ部門を買収

1991年 Allied傘下の蒸溜所が「Caledonian Malts」(一種の蒸溜所グループ。ディアジオのクラシックモルツの成功に対抗したものと市場では見られている。ラフロイグを代表的蒸溜所に、ミルトンダフ、グレンドロナックも組み込まれた)を導入。当初トーモア蒸溜所も参加したが、後に外されスキャパが後釜となった。

2005年 Pernod Ricardがウイスキー部門強化を目的に、Allied Domecqを買収。トーモア蒸溜所の運営は、傘下のChivas Brothersに委ねられた。

**2022年 Elixir Distillers(TWEのスキンダー兄弟)が買収。


【その他:香味に関係すると推測される重要項目】

・年産4100000L

・仕込み水はピート成分を含む、アクヴォッキー川の軟水

ライトピーテッド麦芽を利用し、ほとんどがバーボンカスクによって熟成される。


【フェイク】☆☆

サマローリの1966年蒸留/Tormore 16 yo 1966 (57%, Samaroli, sherry wood)はシンプルなスクリューキャップで、詰め替えフェイクに注意が必要。


【理想的な飲み進めかた】

リリースは少ないものの、80年代、90年代蒸留モノが各ボトラーから発売されていて、特に1990年蒸留のブラッカダーは65度を超える内容に驚きました。80-90年代はバニラ(バーボン樽の影響か?)が強く出る印象がありますが、特徴的なオレンジの果実味は共通しています。

あまり選択肢は多くないので飲み進めるというほどではありませんが、70年代流通の白緑トール瓶のオフィシャルをしっかりと記憶したのち、サマローリ1966へたどり着くのが良いと思います。濃厚シェリーの裏側にあるトーモアらしさに感涙です。


*トーモア Tormore 16yo 1966/1982 (57%, Samaroli, Sherry Wood, Btl no.345) Silver Screw Cap

イベントのためお店を借りましたが、著者が自前で盆栽してきた持ち込みボトルです。