注目キーワード
  1. Bowmore
  2. 1966
  3. Samaroli
  4. Sestante
  5. Intertrade

【もし今から飲み始めるならー2】美味しいウイスキーの分類 250410


【ウイスキーを初めて飲む】
【ボトル選び-2 理想像】

市販されているウイスキーボトルの中身が多種多様で、のちのちそれが魅力に感じるようにはなっていくものの、当初は参入障壁として立ちはだかってしまうというお話をしました。

さらに将来的にといった部分も含めて言うと、ウイスキーを探求していくという観点では「飲んでおいたほうがいいボトル」というものが存在します。有名どころではローズバンクゼニス(15、20)や、クライネリッシュのバイカラーカリラのバロックレイド(12、15)ボウモア60年代蒸留マッカラン60年代蒸留などです。

なぜ飲んでおいたほうがいいと言えるかというと、記念碑的なボトルというのか、他の凡百のボトルと比較しても、多くの人が「その蒸留所、リージョン、時代を代表的に物語る」と認める内容だからです。ど真ん中直球というべきかもしれません。現在の市場評価においても特別な存在となっています。

ウイスキーボトルの中身内容は確かに多種多様ではあるのですが、表現しよう、記憶しようという際に、これらの代表的なボトルをベース(柱)として「比較して」目の前のボトルを表現するようにすると伝わりやすい、記憶をしやすいと思います。

音楽(バンド)で言えば、ビートルズ、レッド・ツェッペリン、クリーム、ブラックサバス、ディープパープルみたいなもので、まさに記念碑というべき存在でしょう。これらを知らないでは語れないというのか、(比較引用するにあたっても)多くの人が知っているので共感共有しやすいという観点から言ってもベストです。

音楽のように、無限にコピーを作ることが出来るわけではないので、(出会う機会は多いものの)見つけるためには多少の困難が伴うかもしれませんが、近年リリースされているような100本200本というボトルに比べると、数千本レベルでリリースされたこれらのボトルは、名前の通ったBARなら置いてあるところも多いですし、個人で買うことも全く不可能ではありません。

一般的とまではいかなくても、これら記念碑的なボトルを「最初の1本」として選ぶことが出来れば、「ウイスキーってこんなものなんだ」と思われていいというか、まさしくその通りと言わざるを得ない選択だと思います

まずは、これが「最初の一杯」としても一番の理想であると考えます。ただ、これらがど真ん中の直球だと思えるようになるには、その後もう少し他のボトルと比較していくことが必要になるでしょう。

飲んだ方にとっては、飲み始め当初、その1本1本が「今後の比較の柱」となるわけですが、それが微妙な立ち位置のものではなく、大黒柱的に立っている、他者との共通言語としても使えるということは安心ですし、便利なことこの上ないでしょう。

もしも飲み始めてしばらく経ってはいるものの、今いち「ウイスキーってそんなに美味しいのかな?」「中身の表現が上手くできない、伝わらない」と思われている方がいらっしゃるとしたら、これらのボトルをしっかり飲んで、比較の柱を立て直してみるといいかもしれません。

特にウイスキー好き同士やバーテンダーなどと感想を交わすとすれば、例えば「ローズバンクゼニスみたいに植物質」であるとか、「ボウモア60年代蒸留のように果実的」といった表現が一番とおりがいいでしょうし、そのあたりのボトルとの比較でそう言っているとなれば、信頼性が高いとも受け止められると思います。

すごく果実的、かなり甘い、と言ってもそこには個々人に程度の差があります。ですので、ベースとなるボトルと比べて表現することが最善策です。個々人の嗜好の差も、これらメジャーで代表的なボトルを例に出して、60年代のマッカランが好みだとかそういう表現であれば、極めて汎用的に伝わりやすいでしょう。

逆にこのあたりのボトルに対して、しっかりとしたイメージが出来ていない人とは、どうしても噛み合わないことがありますその表現の「程度」がはっきりしないからです。そういった意味でもベースとして比較の柱として「飲んでおいたほうがいいボトル」であり、ウイスキーを探求していくという観点では避けては通れない存在だと思います。もちろん比較したうえで、最近の蒸留品のほうが好きだということもあると思います。それで全く問題ないというべきか、最近の創作落語が好きだと、それを古典を理解した上で比較して言っているというような感覚です。そのほうが説得力があります。通ってきた道を確認した上で今を知る、温故知新なイメージです。

しかしながら、そうそうこれらのボトルを最初から飲める場所も機会もない、という場合もあるでしょう。次項からは少しずつ、もうちょっと気楽に臨める方法を模索したいと思います。


【ウイスキーを初めて飲む】
【ボトル選び-3】

前項で取り上げたボトルに比べると、ど真ん中直球というわけにはいきませんが、もうちょっと入手しやすいボトルで考えてみたいと思います。

ウイスキーのタイプというのか、分類の代表例として「シェリー樽熟成品か、バーボン樽熟成品」か、また生産区域として「スコットランド産か、日本産か、(米国産バーボンか)」、更に「シングルモルトか、ブレンデッド(グレーンウイスキー入りの複数蒸溜所混合品)か、ヴァッティング(グレーンウイスキーを加えない複数蒸溜所混合品)」という区分が出来ると思います。本書ではバーボンは申し訳ないのですが取り扱わないので、スコッチかジャパニーズかという区分で進めたいと思います。

シェリー樽でもバーボン樽でも、何回詰めたかによって濃度影響の差はありますし、その両方を混合(同蒸溜所内ヴァッティング)している場合もありますが、ここでは最も強い影響下にある熟成樽という捉え方で大丈夫です。あるいはシェリー樽か、それ以外のナチュラルな樽かという感じです。最初からラムカスクやワインカスクなどはやめておいたほうがいいでしょう。

それらの区分それぞれで、今人気の銘柄を、出来ることならばアルコール度数順に、同一のタイミングで比較しながら飲んでみるという方法を薦めたいと思います。

例えば、ベンリアックのノンシェリー樽熟成品、グレンドロナックのシェリー樽熟成品、山崎のバーボン樽熟成品、軽井沢のシェリー樽熟成品の4つを比較するというのも面白いと思います。

ウイスキーもワインと似ていて、特定の蒸留年の出来が素晴らしく良いということがあります。ですのでベンリアックだったら76、グレンドロナックなら72と美味しければ美味しいほど、もちろん第一印象が良ければ良いほど今後に繋がることでしょう。

アルコール度数に関しては、個々人の耐性差や慣れが影響して、中身を良くも悪くも印象づけることになると思いますが、発売された時期が直近であればあるほど、アルコールばかりが鼻につくという場合が多くなってしまいます。これは発売されてから(樽から瓶詰めされてから)抜栓することなく適切に(10年から30年程度、それ以上は逆にへたってしまうこともあります)保管し続けることで、いわゆる瓶内変化(盆栽)によって、アルコールの角が取れて丸く、決して鼻につくこともなく、尚且つボディの力強さも損なわない状態に持って行くことができます

もしアルコールが鼻につくからといって、度数の低いボトルを選択してしまうと、前述させていただいたようにウイスキーに肝心な「迫力」は損なわれてしまいます。別に迫力は求めていない、染みこむような酒が良いというならば、それでもいいと思うのですが、瓶内熟成を経ることで、樽熟成では渋み苦味が伴ってしまってたどり着けない境地へと至ったボトルも、ウイスキーの魅力の一つ。試してみてもらえたらと思います。

日本でウイスキー流通が盛んになってからもう20年あまり経過していますし、ネット市場も整備されて、オールドボトルの入手ハードルはぐっと下がりました。扱っているお店も多いですので、ここは最初から度数がしっかりしたオールドボトルを選択しても何ら問題はありません。

よく現在売っているオフィシャルスタンダードから飲み始めるべきだと言う方がいますが、私はそう思いません。嗜好品であるにもかかわらず、「暗黙の了解」的に生産者やお店に義理立てして、おいしいと素直に思えないのに無理に飲む必要はないと思うからです。現行品が売れないと困るというのも、中身がともなっていれば、今飲む人も盆栽する人も買うわけですし、中身が伴わないのに買い、売れれば生産者側も創意工夫をしなくなるでしょう。


つづく

**ボウモア企画は定員となりました。ご参加ありがとうございます。ボトル到着次第、再度個別にご連絡申し上げます。