whiskylink

ボウモア Bowmore Islay 35yo 1966 (43.7%, Kingsbury, 109/300 Bts.) 70CL ケルティック

 


タケモトカツヒコ (プロフィール


【スコア】 100 pts 


【ファースト】やや濃い目の琥珀 金色 非常にパワフルな上面発香 赤黄色の果実(+++)←黄色が優勢 マンゴー(+++)パパイア(+++)パイナップル(++) 赤黄色の桃の支え(++) 甘さ優先、酸味は控えめ 上記果実+レモンの皮+蜂蜜+抑え目に奥から、ミント、セリなどの香草(瓜系ではない) ミネラル分は「岩+川」に日光が照っているイメージ(++)←予想以上に豊富 アルコールの力強さは甘い香りと融合し、決して分離していない 至福 時間とともに「甘さ豊富な果実+綿」

【ミドル】ボディはエッジが立っていると言うよりは、膨らむイメージ 度数以上に芯がしっかりしている 干した麦+蜂蜜のイメージ 黄赤色の甘さ豊富な果実の「膜」が舌上に這わされる ウッディさはかすか 明瞭に果実優勢

【フィニッシュ】返り、鼻抜けともパワフルだが、決して角が立っていない 時間とともに余韻部分のミネラル分(ピート由来?)が台頭 終始酸味は目立たない マンゴー(+++)パパイア(+++)パイナップル(++) 赤黄色の桃の支え(++)全体として決して薄いわけではないが、渋み、苦味ともに前に出ないために透明感があるように受け止められる カスタード バニラ シナモン 最後の余韻に微かにナッツ


2013年4月24日

ボウモア Bowmore Islay 35yo 1966 (43.7%, Kingsbury, 109/300 Bts.) 70CL ケルティック を開栓しました。ブロマガでのシェア企画にご参加頂いた方々ありがとうございました。

書きたいことが山ほど浮かびますが、まずは(私の経験上)間違いなく本物でした。何よりのポイントはダンカンテイラーのボトリング特有の「例の味」がしないということです。コルクやカバーフィルム含めて当時のままです。

本ボトル、KB Islay 1966に表記されたカスクナンバーは3300。選者はジョン・マクドゥーガル氏。


<<Mr. John McDougall (ジョン・マクドゥーガル氏)>>

1970年から1974年までアイラ島のラフロイグ蒸留所でマネージャーとしてその生産の全てを監督し、その後1986年から1996年までの10年間をキャンベルタウンのスプリングバンク蒸留所で同じく蒸留所の責任者として、常に現場で働いてきたモルトウイスキーの専門家。その後独立し、モルトウイスキーの鑑定家として活躍しています。ウイスキーライターとして、35年間のウイスキー業界での体験を本にまとめたWort, Worms&Washbacksを出版。


スプリングバンク蒸溜所のマネージャーを「卒業」した同氏は2000年前後から、複数のボトラーから自選のリリースを度々行なっていて、本ボトルを含めスコマのポートエレン78、KBスプリングバンク1991などを手伝ったのち、自らの名を冠したジョン・マクドゥーガル セレクション、ゴールデンカスク、ブレンデッドのスリーエイト(888)をプロデュースするに至ります。


なによりIslay 1966の不思議は、先にも触れましたカスクナンバーが3300、加えてホグスヘッド表記がなされている点です。

この同じカスクナンバーを記したボトルが、ハイスピリッツから同度数で175本リリースされています。

単位的には1ホッグズヘッド= 238.480942 L、220~300Lが平均的な内容量ですが、両ボトルを足すと475本、700MLをかけると332.5L。

さらに35年の熟成を考え合わせると、どうも不自然な量にも思えてしまうのです。


ボウモアの1966年蒸留オフィシャルは、OB43%(ヴァッティング/カスクNo.表記なし)、OB/プレストンフィールド43%(カスクナンバー29)のリリースがあります。

オフィシャルの樽番号とボトラーのそれは単純比較出来ないかもしれませんが、表面上3300番代とは遠い樽番号で、内容でいっても、シェリー樽由来の要素が他のボトラーリリースに比べて明らかに強く、果実味はしっかりしていますが、キャラクターがだいぶ違うイメージがあります。

2000年当時リリースが続いた、ダンカンテイラー、ダグラスレイン(表記があったりなかったりしますが)、そしてKB、ハイスピリッツのボトリングは、樽ナンバーの表記があるものに関してはいずれも3300、3310番代です。ハートブラザースは樽番表記がありませんでした。

個人的な推測では、先頭の3300番はヴァッティングというのか、何らかの時期(ボトリング時かもしれず)に混合されたものではなかったかと思えてなりません。

どうも他のリリースと比較しても、奥行きがあるというのか、味と味の重なりあいから、奥行きや「コク」が出るのだとすれば、その影響下にある気がして仕方がないのです。

そのせいもあって(ヴァッティング)か、海外評価も95点。

ブーケが97点、サマバンクが98点であることから考え合わせると非常に高い評価です。しかも他がフルストレングスなのに対して、本ボトルはカスクストレングスではありますが、43.7%しかないのです。

別項にも書きたいと思っていますが、シングルカスクでは至ることの出来ない境地がヴァッティングにはありますし、それを本ボトルで実感もします。他ボトラーのリリース(近い度数)が概ね「90点台前半」にとどまっていることを考えると、本Islay 1966が突出していることには、シングルカスクとしてはやや違和感があります。

そして(KB、ハイスピリッツ以外の)他ボトラーからのリリースはいずれも本数が少ない(百数十本程度)のリリースでした。

一方、ただこれも3300番同様、地域別に大きな樽から、分けてボトリングされ、表記上ホグスヘッドを名乗った可能性も捨て切れません。

また各ボトラーが独自の樽に詰め替えて仕上げたのだとすれば、ダンカンテイラーよりは、ダグラスレインのリリースのほうがシェリーが濃く出ていることにも合点がいきますし、またダグラスレインの場合には樽番号の表記が「あったり、なかったりする」ボトルが同時期に共存しているのですが、これも理解出来る気がします。

(=シングルカスクには樽番号を表記して、ヴァッティング?の時にはそれを表記できなかったなどの理由があるようにも推察できるという意味で。)


ダグラスレインの日本向けボトルにも、炭酸感が出たものがありましたし、同じ3300番代にもキャラクターの違いはありますので、どの程度疑いに足るのか、自信があるわけでもないのです。

とはいえ、特有のダンカンテイラー色が出ていないことを考えても、ダグラスレイン、KB、ハイスピリッツは、(ダンカンテイラーとは)明らかにボトリング工場が違うか、その工程が違うか、大樽から分けた事情があるということは、味わいの差からも(何やら仕組みがあると)見て取れます。

繰り返しになりますが、少なくても本ボトルは、「奥行きやコク」という点とボディのニュアンスから、少数樽のヴァッティングくさい感じがして仕方がありません。でもなんらか仕組みがあったとしても、内容的に全くマイナスどころか、大いにプラスです。


次にサマローリのブーケットとも違いを考えてみたいと思います。

Bowmore Islay 35yo 1966/2001 (43.7%, Kingsbury, 109/300 Bts.) 70CL
Bowmore 18yo 1966/1984 (53%, Samaroli Bouquet, 266/720 Bts.) Full Strength

熟成年数と度数の違いは明らかです。またブーケは数樽ヴァッティング確定ですが、樽番の表記がありません。

味わい的にはブーケのほうが、白い鶏皮というのか、やや白くて(あえていうならば若さゆえのニューポッティさ、乳酸ともやや違う感覚)、香りには蓋になることはあるにせよ、大きな寄与はしない「白い層」があって、その奥から「南国感」が現れるイメージです。

本Islay 1966はもう、開栓したてから露骨に「南国感」が発散されています。度数からは考えられないほどパワフルです。ただブーケの開栓時はもっと鋭かったです。

色の比較で言えば、ブーケはより黄色くて、透明感がありました。Islay 1966も透明感がありますが、熟成年数が増した分、より甘さが前面に出ているイメージです。


丁度、この中間ぐらいの25年-30年程度の熟成年数でリリースがあれば比較する上でも言うことないのですが、もっと若いケイデンの黒ダンピー1966/14年が、人工加水で80プルーフで、もっと灰っぽいというのか、後味に果実味が感じられるものの、やや同1965/13年同様の地味なイメージ寄りな仕上がりだったことが思い出されるのみです。

ブーケットを開けて以降、黒ケイデン1966/14年には出会っていないので、今一度、本当にネタ元としての共通項がそこにあるのか、再確認を渇望しています。もしお持ちな方がいらっしゃったら、開けるときには何卒シェアをお願いしたいです。


ボウモアの1966年蒸留は、自分の人生を変えたウイスキーなので、思い入れもありますし、もしかするとそれは、近年ベンリアックの1976あたりに感動した現代のドリンカーと同じ気持ちなのかもしれません。

原材料やフロアモルティングの有無だけではなく、1950年代蒸留にも確かにあった果実味を考えても、その「南国感」の理由には個人的に、かつてスティルに繋がれていた「双頭式の冷却器」も大きく寄与していたものと思っています。

また、その後顕著にパヒュームを生じた原因は、冷却器を流れる冷却水の温度が、エコ観点が優先して高温だったことに由来したと、オーナー企業に当たるサントリーも解説しています。

1990年以降その点に気がついて20度以下にキープ、1993年蒸留には往年の。。。とまではいかないものの、1969年当時あたりにまでは一時的に戻れたのかなと思っていますが、何かまだはっきりしない要因、大麦なのか酵母なのか、モルティングなのか、発酵なのか、その他装置なのか、ボウモアの場合、決して他の蒸溜所の根幹的原因である「樽」だけの責任ではなさそうなだけに、今一度、まだ1966年当時に働かれていた方が存命中に「復活のための調査」でも行なってもらって、そのノウハウを活かせるものならば再び現代に呼び戻して欲しいと、切に願う次第です。



モバイルバージョンを終了