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トマーチン Tomatin 34yo 1976/2011 (51.3%, whisk-e, The School Of Malt, lesson 1, Dave Broom)

タケモトカツヒコ
タケモトカツヒコ

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タケモトカツヒコ (プロフィール


【スコア】 BAR飲みのため非公開


 【ファースト】:焦げた杏の皮  プルーン(奥にこもった感じ) モンブラン  バニラエッセンス 

【ミドル】:枝  ローズ  若干の香水 

【フィニッシュ】:渋み イチジクの丸煮 


76 トマーチン繋がりで、Dave Broom氏が関わったという「The School Of Malt lesson 1」

Visual Flavorと似た路線を狙ったのか、わかりやすい香味を持ったボトルで学習しましょう、ということなのでしょうが、残念ながら私の知る限り、反応は「よくわからなかった」という方が多勢。

ウイスク・イー社のリリース時テイスティングノートに最近頻出している「ランシオ」。しかしそれ自体の定義が曖昧なので、厳しいようですが、これも仕方ない反応だと思われます。

同社はベンリアック、ドロナックをかかえているので、こだわって使いたくなる気持ちはわかります。でもなぜこのトマーチンをレッスン1に据えたのか。前記蒸溜所の有力ヴィンテージであれば、みんな納得したと思うんです。


この機会に「ランシオ」について私見を書いておこうと思います。


上記のテイスティングノートは、通常時と異なり、自分なりにわかりやすかった要素だけを素直に抜き出しました。

従来リリースされてきたトマーチン76では、たしかに存在したと思う「ピーチ、濃厚でエキゾチックなトロピカルフルーツ」といった部分は、もしこれが初めての76トマーチンという方には難易度が高かったでしょう。

さらに問題は、ランシオ。

私は定義が曖昧なので普段使うことがありませんが、結局のところ、長い熟成や酵母、高温環境によって「過度に内容が”酸化”された状態」を示す言葉で、元々ブドウ原料の酒から使われ始めたために、ウイスキーの世界ではシェリー樽に限定して、テイスティングコメントに登場している様子があります。

しかしながら、実態はアルコール、アルデヒド、ケトンという可逆的な反応において、「ケトン基」に由来する香りということです。

かつてバルヴェニーが、シャンパーニュ・コニャック製造の

ガブリエル社に66年蒸溜の自社製品を鑑定してもらい、まさしく「ランシオ」とお墨付きを貰ったというところから端を発していて、Whisky Magazine誌上では「ヘプタノン、アミルケトン」が鍵となると書かれています。

化学の分野では、国際的にヘプタノン、アミルケトンと言っても官能基ではなく、どの炭素にケトン基が付いているかがわからないままでは、場所によって香りも変わってしまうので、この記載ではちょっと困ってしまいます。

まずここでは「ケトン基」が問題なのだと解釈しておきましょう。

アルコールの酸化形態については「http://www.geocities.jp/don_guri131/sibousannso01.html」が分かりやすいです。

そしてケトンの香り、つまりは「ケトン臭」ですが、Googleで検索してみても、まああまり健康的な状態には使われません。

ブドウも麦も人間も、同じく炭素から出来た有機物です。ですので、それらが酸化すれば一部にケトン体も発生します。


では私自身が「ウイスキーにおけるランシオをどう捉えるか」ということを書いておきたいと思います。

過度に酸化しただけならば、「ヒネ」もそうなんだと思いますが、これは若干硫黄由来のゴム的要素も内包して表現している気がしています。

特にウイスキーの世界では、ランシオという単語自体、美的表現を込められている気がしてならないので、アルコールと相まってという部分を加味して、熟成のピークを捉えたとき(または瓶熟<ビン内酸化>によって更なる酸化を迎えたボトル)に発生する「周囲に発散するような熟成香」としておきたいと思います。

ひと言でいうならば、その名の通り「貴熟」、”高貴な熟成香”ということなのでしょう。

これがブドウに限定されるなら、ケトン云々ではなくて、ブドウ由来の炭素骨格がキーになるはずです。ケトンというなら、あらゆる炭素骨格において発生します。

ただ、ポートやマデイラで言う場合は、明らかに酒精が強化されたものを表すのだと思います。


【参考】 wikipedia

ケトン (ketone) は R−C(=O)−R’ (R, R’ はアルキル基など)の構造式で表される有機化合物群。身近な物質の中では、除光液として用いられるアセトン (R, R’ が -CH3の場合) が代表例である。

R または R’ が水素原子であるときは、アルデヒドという。環状不飽和炭化水素パラ位カルボニル基になっているものはキノンと呼ばれる。

 

【主なアルデヒド化合物】 wikipedia