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ロッホサイド Lochside 22yo 1966/1989 (43%, Signatory, C#7253-55, 800 Bts.)

タケモトカツヒコ
タケモトカツヒコ

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タケモトカツヒコ (プロフィール


【スコア】 Bar飲みのため非公開


【ファースト】:ライトなイメージ 麦感豊富  食パン  奥にアメリカンチェリー  アップルパイ  べっこう飴

【ミドル】:ボディは角が立つことなく、丸みを帯びているが舌上に留まる ややウッディ 麦 トーストしたパン

【フィニッシュ】:返り優先 ややドライで、余韻は長くない 甘さひかえめ


ロッホサイドも紆余曲折の歴史を持った蒸溜所で、ウイスキーの蒸溜所として稼動したのは1957-1992年までの短期間。

元々「醸造所」として1781年に設立された建物は、1833年に”James Deuchar”氏によって買収された後、ビールの本場、ドイツやベルギーのバウハウスの設計デザインをベースに大規模な改修が行われると同時に、水路も拡大されました。

タワーの最上階で醸造プロセスを開始し最下階で完成させる、作ったビールを”Beeries”とよばれる船で運搬する、など斬新な手法で注目を集めると、1956年にはエジンバラに移転することになります。

米国禁酒法時代、カナダでウイスキー蒸溜を行って莫大な財産を築いた、Joseph Hobbs氏を含むスペイン系の投資家グループが McNab Distilleries 社を設立したうえ、1957年ロッホサイド、ヒルサイド(グレーン)、ベンネヴィスを買収。

ロッホサイドにも、コフィー・スティルを設置。

コフィー・スティルは1830年に、アイルランドの収税官、イーニアス・コフィーが発明した「連続式蒸留機(コフィー・スチルまたはパテント・スチル)」であり、グレーン・ウイスキーが生み出されるきっかけになったものです。

またコフィー・スチルは特許で守られた高価な機械で、他にこれを導入したのはグラスゴーやエジンバラといった都市部に近く大きな資本と市場を持つローランド地区の蒸溜所などが主で、このコフィー・スチルで蒸溜を行うと麦芽の持つフレーバーが大きく損なわれるため、大麦のモルト・ウイスキーではなくトウモロコシを主原料とするグレーン・ウイスキーで用いられるのが通常であったといいます。

このあたりでもMcNab Distilleriesの操業姿勢が垣間見れます。

ロッホサイドは、投資家集団である彼らが成功したカナダの土地名に由来する、McNab という名のブレンデッドウイスキーのメインモルトとして利用され、主にスペイン市場で販売されるようになります。また同じスペイン市場では「ロッホサイド」の名前でモルトウイスキーとしても販売されました。

Joseph Hobbs氏の死後、シェリー・メーカーのドメックの子会社が1973年11月にロッホサイド蒸留所を買収。

コフィースティルは取り外され、モルトは同社のブレンデッドウイスキー”DYC”に利用されることとなります。

しかし1980年代に入ると休操業をくりかえし、1992年アライド・グループが買収したものの生産をストップしたまま。2005年に再開発のため取り壊され、スーパーマーケットが新たに建設されました。


。。。とはいえさらに驚くべきことは、コフィースティルが用いられていた時代、1966蒸溜のロッホサイドにも美味しいボトルが多いという事実です。

もはや蒸留方法など大した問題ではなく、連続蒸溜でカスカスになろうとも、原材料そのものと樽さえ良ければ何とでもなると言わんばかりです。逆を言えば、現在多くの蒸溜所がこの点で大きく当時から遅れをとっていると考えざるを得ません。

樽・原材料。。。当時の水準に戻す方法はないものでしょうか?