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最近のニューリリースについて

Twitterでメッセージを頂いたので、率直なところを書かせていただこうと思います。

「最近のニューリリースはどうか?」という話で、勢いのあるドイツ系ボトラーからは「特定蒸溜所の同年ヴィンテージ」が連発されていて、出来れば熟成を重ねたほうが面白いのになと感じているのと、同時に新たな発見があまり無いので、いまいち記事として書こうという優先順位が自分の中で高くなかったという状況でした。

メッセージを受けて、中でも最近良かった「キース70」と「グラッサ78」については書いてみたんですが、93ボウモアのリリース後半プライベートストック以降、ドイツ系のボトルにはどれも共通して「粘性+果実エステル+脱水」傾向が目立ってきていて、これについては上記記事にて触れさせて頂いたとおりです。

出来れば、在英、日本のボトラーさん、酒屋さんのボトル等で「まだ陽の目を見ない蒸溜所・ヴィンテージ」を見つけ出して、気合の乗った記事をたくさん書いていきたいですね。

特定の蒸溜所、特定の蒸溜年ばかりになると、需給バランスが偏りすぎて、価格高騰が進み、更にはそれが全体に波及することにもなってしまっていますので、これも歓迎できません。


6/25記事、そして頂いたコメントでも、このあたりのお話をさせていただいているので、再掲載させていただこうと思います。


グレンロッシー Glenlossie 17yo 1973/1990 (40%, Sestante, Antica Casa Marchesi Spinola, Collection no.1, Btl no.935)

グレンロッシーといえば、ヘイグのメインモルトであり、セスタンテは1988年にも、「Glenlossie 16yo 1972 (57.7%, Sestante, White Label with Green Letters, 75cl) c1988」をリリースしています。

ヘイグの70-80年代ボトルで確かに感じられる”クリーミー”な印象が、より輪郭を太くして目の前に迫ってくるように感じます。

やはり80年代後半-90年代初旬のセスタンテは”主要ブレンデッドにおける単一蒸溜所原酒の役割”を理解させるといいますか、それらを根底においた、「意識的な」リリースを行っていたことが、何よりの魅力でしょう。

サマローリはむしろ、従来のブレンデッドでは感じ取れなかった、単一蒸溜所原酒の魅力そのものに主眼を置いて、自ら高品質な樽の選抜を行ったボトラーと言えると思います。

インタートレードは、透明度が高く、純粋性を捉えたリリースが目立ちますね。


余談ですが、近年のリリース状況を考えると、ボトラー毎の個性やスタイル・方向性が語られることは稀のような気がします。。。

ボトラー間での樽のシェア、争奪のパワーバランスに「飲み手」が翻弄される構図というものが出来つつある気がしてなりません。

直近で評価の高かった蒸溜年樽を、有力ネゴシアンが次々に掘り尽くし、周辺ボトラーが群がる

しかもそれらを貯蔵することなく、すぐに掃き出し、短期の利回りと回収を優先しているように見えます。

特にトマーチン、キャパドニック、ロッホサイドは、1,2年前なら面白かったでしょうが、現段階で大して代わり映えのないリリースを重ねているとしか思えず、そんなことよりも将来に向けて熟成年数を刻むことを優先するべきなのではないかと考えます。


ウイスキーは複雑。だから面白い。

多くの人が認めるウイスキーに対する評価だと思いますが、これは言い換えれば、分かりきった内容、二番煎じでは面白みに欠けるとも言えなくはありません。

ウイスキーの魅力にそういう要素があるからこそ、飲み手もこだわるようになれば、オフィシャルスタンダードだけでは満足できなくなり、そこで初めてボトラーの存在意義が出てくるはずです。

美味いかマズいか、ただそれだけじゃないないから面白い。何かもっと奥から訴えかけてくるものがあるから楽しい。ありふれてしまえば面白くないのだと思います。

まだ陽の目を見ない魅力的な樽探しを行ない、飲み手に紹介することが、ボトラー本来の役目、バーテンダーのセンスだと信じたいです。


 

What Others Are Saying

  1. BEAUTIFUL DAY6月 26, 2011 at 11:59 PM (Edit)

    タケモトさん

    こんばんは、BEAUTIFUL DAYです。

    ちょこっとコメントを。

    二番煎じじゃ面白くないという意見は良く分かるのですが、二番煎じ、三番煎じくらいやってもらえないと、普通の飲み手まで回ってこないという現状もあるのでは?と思います。
    今も国内に入ってこない評判のいいボトルはたくさんありますし、入ってきてもほとんどが一般消費者では手に入れるルートが無く一部のBarに流れてしまい飲めないという状況が散見してると思います。

    たとえばキャパ1972やロッホサイド1981やトマーチン1976やクライヌリッシュ1982といった最近リリースが連発しているものも、普通の人が手に入れられるのは三番煎じくらいからだったかな~と思ってます。

    ボトラーが自分たちの個性にあった樽をリリースしていって欲しいという点や、将来に向けて熟成していくとい点もそのとおりだと思いますが、評判のいいビンテージを多少はありふれさせてくれることもボトラーの役割のひとつではないかなと思います。

  2. admin6月 27, 2011 at 1:19 AM (Edit)

    BEAUTIFUL DAYさん

    コメントありがとうございます。

    意見の違いはどうしてもあると思いますが、個人的には行き渡ることの重要性を考えても、今回のトマーチン、キャパドニック、ロッホサイドの特定ヴィンテージは出過ぎかなと感じました。ボウモア93もそう思います。

    ただ、これはオフィシャルボトルであれば、それも構わないと思うんです。蒸溜所の方針だと作り手が考えるのなら受け入れられます。

    しかしそれが、ボトラーによって行われるとなるとやや問題があるのかなと。。。

    本文ではややぼかしてしまったので、ここで補足させてください。

    特定のブランドや既に高評価されたヴィンテージを飲むことの価値というのが高まりすぎて、それらの新規ボトルが必要以上に高騰し過ぎているように思います。

    これはオールドボトルでは仕方が無いと思えますが、このところ新規ボトルでも同じ傾向になってしまいました。オークションでどうこうというのも歓迎できませんが、リリース段階で乗せすぎではないかと。その原因も特定のネゴシアンやボトラーが起源となり、市場をコントロールしている状況に起因している気がするのです。それが、今回のG&Mの価格アップにも代表されるように、スコッチウイスキー業界全体に波及するに至ってしまいました。

    G&M ケイデンヘッズ シグナトリ DL DT と価格や流通に関して2000年代前半までは、スコッチウイスキー全体の発展に根ざして行われてきたと思います。

    幅広い蒸溜所の”評価されるべき樽”が、巡回的に出てきて、先入観なくそれらと向かい合うことが、重要視されなくなっても困るといいますか、「むしろ知られていない、評価されるべきボトルを発掘していくことの方が面白い」と思われる方が増えれば、こういった行き過ぎ傾向も減るのではないかと思います。

    熟成させて、また違う面を探すチャンスがなくなることも残念です。。。

    ですので特定ボトラーが複数の樽を抱えたときに、どうせなら往年のセスタンテやサマローリのようにバッティングによって個性を出して、1度に多くの本数がリリースされるほうが、価格や流通面でも健全で潔いのかなと思います。多くの人が同一のボトルを評価出来る環境が生まれますし。違うラベルで、極少数のリリースでは、それが連続したとしても、同じラベルを飲んで共感できる人数は少ないままということにもなってしまいますので。

    確かに行き渡ることと、短期に放出しすぎて資源を枯渇させないこと、バランスが大事なのかなと思います。

  3. BEAUTIFUL DAY7月 4, 2011 at 10:09 PM (Edit)

    タケモトさん

    こんばんは。

    おっしゃるとおり過剰な価格の高騰や投機的な状態は一ウイスキー飲みとしては残念な状態ですね。

    私もヴァッティングして本数多めのリリース案は大賛成です。
    もしくは300mlボトルにして、今までの倍くらい本数を出して欲しいです。

    ただ、評判のいいビンテージは買うほうからすると安心感があるのも事実で、1万円を超えるような価格帯のボトルを購入するときは、やっぱりある程度評判の良かったビンテージに手が伸びるのもあるかな~と思うので、評判の良いビンテージがそこそこリリースされるのはバランスは重要ですが、やっぱりありかなと思います。

    リカーズさんのように試飲ができるお店が増えれば、今まで知らなかったボトルにチャレンジする機会も増えるのでしょうが、輸入元のコメントだけではなかなか難しいものを感じます。

    ですので、私からのタケモトさんへのお願いとしては比較的リリースしたてのもの(まだ市場で買えるようなもの)をどんどんテイスティングレポートして欲しいです。
    それを参考に新しいチャレンジをする人たちが増え、ウイスキー業界がいい方向にまわるひとつの要因になると思います。

    私も飲んだボトルはできるだけコメントをUPするように頑張ります。

    ではでは、長いコメントで失礼しました。

  4. admin7月 5, 2011 at 1:30 PM (Edit)

    BEAUTIFUL DAYさん

    確かに、このところ新規リリースは特別な理由(すごく販売コメントが。。。等)がない場合には、オークションへの影響や購入障害になってもいけないと、自粛していたのですが、それももうあまり気にすることはないのかなと思えてきました。

    今後はニューリリースについても積極的に取り上げていきたいと思います。

    BEAUTIFUL DAYさんからの記事UPもお待ちしております。

    よろしくお願いします!